2020/12/15LROニュース(7)

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  • 2020.12.15 UP
    2020/12/15LROニュース(7)
    • 【1】 NOAA: Arctic Report Card 2020を発表
      • 【1】米国海洋大気庁(NOAA)が、15か国の133名の科学者による、北極の天気/気候/海洋/土壌に関する環境的な観測と分析をまとめた標記年次報告書を12月8日発表したところその概要は以下のとおり。①2019年10月から2020年9月までの1年間の地表の平均気温は、1990年の観測開始以来2番目に高かった。過去10年間のうち9年間は、1981年から2010年の平均気温を1℃以上上回っており、北極圏の気温は過去6年間に渡って最高記録を更新し続けている。②2020年の春はシベリア全体で異常な高温が観測され、6月にはユーラシア大陸の北極圏で、雪に覆われている年間最少地表面積が過去54年間で最小となった。③9月には北極海の最小海氷面積が衛星観測開始以来2番目の小ささとなり、北極海の海氷は過去10年間で、より若く、薄く、脆弱な氷塊へ変化している。④露北方のサハ共和国では、異常高温と積雪量の減少により、大規模な山火事に見舞われた。⑤北極海の長期間にわたる海水温の温暖化によってプランクトンブルームが増殖すると共に、氷の融解で拓けたベーリング海峡からオキアミやその他の食料源が北上してきたことによって、過去30年間でホッキョククジラの頭数が復活してきている。
      • 原文 December 8, 2020, NOAA(植木エミリ)
    • 【2】 EU: 国連総会で海洋政策の概要を表明
      • 【2】12月8日、国連総会でEU代表は海洋政策について表明したところその概要は以下のとおり。①コロナ復興にあたっては、最新の科学的な知見に基づき、環境に配慮したgreenerでbluerな経済復興にする必要があり、EUは「国連持続可能な開発のための海洋科学の10年」に積極的に参画していく。②EUは船員と漁民が果たす役割の重要性を認識し、パンデミックの影響で多くの船員と漁民が交代できない問題について、先日国連総会で決議が採択されたことを歓迎する。③EUは共通漁業政策の下、持続可能な漁業を目指しており、過剰漁獲やIUU漁業の原因となる国家助成について、WTOの場における交渉が速やかに妥結することを期待する。④EUは国連海洋法条約(UNCLOS)が海洋管理の法的枠組みとして重要であり、全ての国家がUNCLOSを批准し、UNCLOSの基本原則と規則を遵守し、地域的な安定と海上保安を損なうような行動をとらないことを全加盟国に求める。⑤海洋生物多様性の枠組を強化するため「国家管轄権外区域の海洋生物多様性」に関する協定の交渉が早期に妥結することを期待する。
      • 原文 December 9, 2020, 欧州委員会(長谷部正道)
    • 【3】 露政府:MASS試験運航を露全土で許可する政令を発表
      • 【3】12月5日、露政府は、2025年の12月まで、政令で定める条件に従い、全ての海運会社にロシア全海域で海上自律運航船(MASS)の試験運航を認める政令を12月5日発表した。IMOが作成したMASSの試験運航のための暫定ガイドラインを基に、1972年の国際海上衝突予防規則に従って試験運航が実施される。海運会社は試験運航を開始する20日以上前までに連邦海事河川庁(FAMRT)に、試験運航の申請を提出しなくてはならない。実験を実施する船舶・計画海域・試験期間・搭載されている自律運航システム・試験運航の責任者・試験を実施する船主が作成した安全規定などの情報を申請書に記載する必要がある。MASSの試験運航期間中、海運会社はFAMRTに試験の実施状況を報告しなくてはならない。MASSの船上で船員が自動操船機器を操作する場合に、法定の必要船員配乗人数以下の船員数で運航できることも政令で認められた。
      • 原文 December 10, 2020, Marine Insight(長谷部正道)
    • 【4】 森林がCO₂を吸収する能力が減少
      • 【4】大気中のCO₂が植物の光合成を促進する効果を二酸化炭素施肥効果(Carbon Fertilization Effect: CFE)と呼ぶが、人類の活動によって大気中のCO₂濃度が上昇するとCFEも高まり、森林等によるCO₂吸収量も増えると考えられているが、南京大学の地理海洋科学研究所の研究者達は、衛星観測情報と地表の観測情報を活用して、1982年から2015年にかけて、世界的な規模でCFEがどの程度機能したかを分析した。その結果、当該観測期間中に大気中のCO₂濃度が高まったにもかかわらず、おそらく土壌中の窒素・リンなどの栄養素や水分の減少によって、CFEが弱まってきていることが判明した。多くの気象学者が現在採用している炭素循環モデルにおいては、CFEが弱まってきていることが十分に考慮されていないため、こうしたモデルに基づき想定されている天然のCO₂吸収可能量は実際の能力より過剰に見積もられている可能性が高く、気温上昇を抑制するためには、天然のCO₂吸収能力に過度に期待することなく、社会的な気候変動緩和対策をしっかり講じる必要がある。
      • 原文 December 11, 2020, Science(長谷部正道)
    • 【5】 英国気候変動委員会:第6次炭素予算を発表
      • 【5】12月9日、英国気候変動委員会は、2033年から2037年の期間に英国内で排出できるCO₂の法的上限を定める第6次炭素予算を発表したが、2035年までに1990年実績比で、CO₂の排気量を78%削減することを目標としており、これに対応した海運分野における勧告の概要は以下のとおり。①外航海運を英国の気候変動対策の中に正式に組み込み、6次炭素予算で外航海運に対しCO₂排出量を割り当てる。②世界的な海運政策/研究開発に対する財政的支援/船舶エネルギー効率の向上/2050年までに船舶からのCO₂排出量を半減するというIMOの目標のさらなる強化のためIMOと協議を続ける。③2050年までに英国の海運を炭素中立にするためのClean Maritime Planを作成するとともに、生産・燃焼過程で炭素を排出しないアンモニアと水素の供給網の整備のためのインセンティブを講じる。④遅くとも2030年までに商業ベースで少なくても年間2 TWhのゼロ炭素燃料を生産するための英国で初めてのClean Maritime Clusterを構築し、2035年までに英国海運で使用される燃料の1/3以上をゼロ炭素燃料とする。⑤船舶のバッテリーを充電するための陸上電源を港湾に整備するのを支援する。⑥ゼロ炭素燃料とそれに対応した機関や船舶のエネルギー効率化のための技術開発と実証実験を促進する。⑦船舶からのCO₂排出削減の進捗状況を監視し、英国全体の気候変動目標の中で、海運の脱炭素化をどのように進めるか検討する。
      • 原文 December 9, 2020, The Climate Change Committee(長谷部正道)
    • 【6】 2030年までに10億人に再生可能エネルギーの提供を目指す世界連合
      • 【6】現在、世界の10人に1人(約8億人)がまだ電気を使用出来ず、パンデミックはこうしたエネルギーアクセスへの不公平をむしろ拡大しているが、より公平で安全な社会をもたらすために、12月10日、ロックフェラー財団は、アフリカ開発銀行・英国の開発金融機関であるCDC・欧州投資銀行・国際エネルギー機関・国際再生可能エネルギー機関・国連開発計画・米国国際開発金融公社・米国国際開発庁等が参加した、以下の目標を掲げた世界連合を立ち上げた。①分散型再生可能エネルギー(DRE)システムの可能性を最大限活用して、エネルギーの貧困を終わらせ、電気が未だ利用できない10億人の住民の生活を向上させるために、世界/各国/地域の官民のリーダーの力を糾合する。②地域の雇用を創出し、持続可能な生活を促進し、環境的にスマートで天災にも抵抗力のある将来の電力網を建設するため、DREの技術開発に官民の資金が投入されるよう、具体的なDRE開発計画を提案し調整する。③再生可能エネルギーに関する技術開発に対する投資や関連する経済開発協力を増加させるため、被援助国のリーダーと協力して、被援助国における適切な法的/政策的/金融面での受け入れ態勢の整備を支援する。④被援助国のDRE事業に対する更なる投資を促進するため、事業開発や新たな金融手法の強化について連携する。
      • 原文 December 10, 2020, UNDP(長谷部正道)
    • 【7】 ロンドンの警戒レベルが12月16日から最高レベル(Tier3)に引上げへ
      • 【7】全国的なロックダウンが解除となった12月2日以降、イングランドでは3段階の警戒レベルを設定して各レベルに応じて地域ごとに対策を実施しており、ロンドンはこれまで2番目に高い警戒レベル(Tier2)を維持してきた。しかし、イングランド南部でコロナウィルスの感染が急速に拡大している状況を受け、英国政府は各地域の警戒レベル見直しのスケジュールを早め、12月16日午前0時01分からロンドンなどの警戒レベルを最高レベルのTier3に引き上げることを本日決定した。Tier3に分類された地域では、パブやレストランなどの飲食店は持ち帰り営業又は配達営業のみ許され、他の地域との往来も自粛が求められるなど、厳しい制限が課せられることになる。また、英保健相は、イングランドの少なくとも60の地域で変異したウィルスによる感染事例が確認され、すでに世界保健機関(WHO)に報告するとともに現在科学者による調査が調査を進めていることも明らかにしている。

        ※12/13の英国の感染者数:18,447人(日本3,030人の6.1倍、緊急事態解除基準47人の392倍)
        ※12/13の英国の死者数:144人(日本28人5.1倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 December 14, 2020, BBC (若林健一)
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