2020/11/25LROニュース(7)

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  • 2020.11.25 UP
    2020/11/25LROニュース(7)
    • 【1】 米の消費者の3/4がコストを負担しても環境に優れた海運を支持
      • イェール大学等が協力して、10月半ばに米国の消費者を対象にして意識調査を実施した結果が発表されたところその概要は以下のとおり。①環境に配慮する海運会社を製品の輸送に使用している企業の製品を、それ以外の企業の製品に優先して購入するとした回答者が74%。②企業が環境に配慮する海運会社を輸送に使用することにより、製品価格が上がっても引き続き当該製品の購入を続けるとした回答者が70%。③最も環境に負担を与えない燃料を使用している海運会社を製品の輸入のために使用している企業の製品を購入するとした回答者が75%。④海運業界は海上輸送に伴う環境への影響の削減のため更なる努力をすべきであるとした回答者が84%だった。⑤調査を実施したイェール大学のPacific Environmentの責任者は、今回の意識調査の結果、自社製品の海上輸送から発生するCO₂排出削減に無頓着な企業は、消費者の健康と環境への海上輸送による影響に配慮した輸送目標を立てている企業との間で競争力を失う可能性があると指摘している。
      • 原文 November 17, 2020, Pacific Environment(長谷部正道)
    • 【2】 CCMLR審議結果: 南極の海洋保護区の拡大で合意できず
      • 南極における海洋生物資源保護委員会(CCAMLR)では、2002年に南極海における海洋保護区(MPA)のネットワークの構築が合意されて以来、2009年に南オークニー諸島の南の大陸棚に9.4m万㎢のMPAが設立され、2016年にも世界最大となる155万㎢の広さを持つロス海地域海洋公園が設置されたが、その後、新たなMPAの指定には26の加盟国の全てのコンセンサスが必要になり、中国やロシアが既得の漁業権を守るため反対に回っているため、新たなMPAの設立が進んでいない。10月に開催された第39回年次会合では、審議時間も短く、1隻のロシア漁船がMPAで違法に漁業を行っているとのNZから提出された証拠についての議論が大半を占めたが、コンセンサスでIUU漁業と認定することはできなかった。今回最も合意の可能性が高いとされていたMPAは、ペンギンの餌場である豊かな冷水サンゴ礁を有する南極東側の3つの区画で、当該MPAに関する議論は8年連続で続いている。他に議題に挙がっていたのは、南極半島に隣接するウェッデル海に180万㎢のMPAを創設するというもので、合意された場合世界最大の自然保護区となる。またアルゼンチンとチリより、南極半島西部のMPA創設も提案されており、この海域は観光業/漁業/地球温暖化の影響に特に脆弱で、南極海のオキアミの75%が生息している。気候変動と南極海での漁業の増加を受けて、環境団体はCCAMLRに早急な対応を求めていたが、3つのMPAはどれも合意に至らず、審議は2021年に持ち越される。
      • 原文 November 19, 2020, China Dialogue Ocean(植木エミリ)
    • 【3】 豪に就航する船社の団体がAMSAによるコロナ特例の廃止に強く反発
      • 豪に就航する主たる船社の業界団体であるShipping Australia Limitedが、豪海事安全庁(AMSA)がパンデミックに伴う特例として認めていた船員雇用期間の延長などの特例措置を2021年2月一杯で打ち切ると発表(海事通報10/20)したことに強く反発する声明を発表したところその概要は以下のとおり。①船員交代の問題が発生したのは、州/特別地域政府の過剰な規制のためである。②IMOは船員交代のための手順書を作成し、MSCは9月21日に各国に対し、船員交代のための窓口(Focal Point: FP)を指定することを決議(MSC. 473(ES.2))し、仏・希・比・西など多くの国が既にFPを設けているのに、豪政府は、11月19日になってようやくインフラ・交通・地域開発・通信省をFPに指定したばかりである。③豪政府はどうしたら2月末までに豪における船員交代が解決できるのか一切示していないし、地方政府が現在の規制を緩和しない限り、2月末までに解決できる見通しはない。④西オーストラリア州政府が良い例だが、船員交代に関する規則を頻繁に変更し、そのたびごとに船社が非現実的な条件に対応するのは極めて困難。⑤このような状況下で、2021年3月からAMSAが海事労働条約の原則に従い、取り締まりを強化するなら、多くの船舶が豪の港湾で拘束され、豪の経済が麻痺するだけである。
      • 原文 November 20, 2020, Shipping Australia(長谷部正道)
    • 【4】 加・豪・ルーマニアがNATOの海事無人システム(MUS)イニシアティブに参加
      • 北大西洋条約機構(NATO)は、複雑化する海上領域における情勢に対応すべく、洋上やその上空、海面下における海軍の多国的な運用能力の強化を目的とした海上無人システム(Maritime Unmanned Systems:MUS)イニシアティブ を推進しているが、11月20に開催されたバーチャル形式の会合においてNATO加盟国であるカナダ及びルーマニア並びにNATOのパートナー国であるオーストラリアが新たにこれに加盟した。MUSイニシアティブは2018年にNATOに加盟する13カ国により創設され、今回の3か国の加盟によりメンバーの数は17カ国となった。パートナー国からの参加はオーストラリアが初となる。海軍の分野に無人運航技術を導入して海上領域におけるあらゆる脅威に対処する基盤を作り上げることにより、より強力な武器を搭載した新型潜水艦への効果的な対処や、機雷が設置された海域など危険な状況における人的被害の防止が期待され、各国は運航実験や民間部門との連携など無人運航技術の導入に関連するあらゆる分野で協力することになる。
      • 原文 November 20, 2020, NATO(若林健一)
    • 【5】 バイデン政権:5つの環境規制緩和を阻止すれば約20億トンのCO₂削減効果
      • トランプ政権は、過去4年間に100件を超すオバマ政権時代の環境規制を撤廃/緩和してきたが、バイデン新政権がそのうち最も重要な以下の規制緩和を阻止すれば、2035年までに、露から1年間に排出されるCO₂とほぼ同量の18から21億トンのCO₂の排出を阻止できることが、Rhodium Groupの研究で判明した。具体的には、①自動車の燃費改善目標をオバマ政権の目標(2025年までに1ガロン当たり54.5マイル)に戻せば、10億トンのCO₂排出を削減。②発電所からのガス排出基準をオバマ政権のClean Power Planに戻せば、2.4億トンのCO₂排出を削減。③石油ガス生産から派生するメタンガスの排出規制をオバマ政権の規制に戻せば、CO₂5.9億トン相当のメタンガス排出を削減。④冷蔵庫やエアコンに使用されているフロンガスの使用規制を、オバマ政権の規制に戻せば、CO₂1.7億トン相当のフロンガスの排出を削減。⑤都市ごみの埋め立てから発生するメタンの排出を規制すれば、CO₂4600万トン相当のメタンガスの排出を削減することができる。
      • 原文 November 16, 2020, Inside Climate News(長谷部正道)
    • 【6】 新興国:電気自動車の普及によって外国へのエネルギー依存から脱却
      • 気候変動リスクに関する金融専門家によるClimate Tracker Initiativeが標記報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①新興国は、エネルギー源として外国からの石油の輸入に依存しているが、バッテリーの価格が低下し、新興国内での再生可能エネルギー発電のコストも減少してきており、交通システムを電化することにより、高い外国産石油への依存から脱却できる。②IEAによれば、交通関連の石油需要は2030年までに1日当たり530万バレル拡大するが、80%以上が中国やインドなどの新興国における需要増で、新興国はGDPの約2%を石油輸入に使う一方で、交通機関の排ガスによって年間28.5万人が早死している。③電気自動車に搭載するバッテリー価格の低下によって、電気自動車がガソリン車と価格的に競争できる水準になっており、2030年までにはさらなるバッテリー価格の低下によって、電気自動車の方がはるかに安くなる見込みである。さらに、燃料コストで見ても、輸入されるガソリンに比べて、再生可能発電の方がはるかに安くなる。④新興国市場における石油需要の減少によって年間2500億ドル(約41兆円)が節約でき、その節約額で再生可能エネルギー関連インフラの整備ができる。⑤中国では、2019年の実績でバスの新車販売の59%、2輪車の新車販売の61%が電動で、2025年までに自動車の20%を電気自動車にし、2035年までに全ての車が電動対応となる見込み。インドやベトナムも電気自動車の普及に努めている。新興国市場による電気自動車の普及が進めば、石油の需要量の増加を2030年までに1日当たり380万バレル削減することが可能で、石油需要のピークアウトにもつながる。
      • 原文 November 20, 2020, Carbon Tracker(長谷部正道)
    • 【7】 オックスフォード大学が開発中のワクチンの高い有効性を確認
      • 11月23日オックスフォード大学とアストラゼネカ社は共同開発を進めるコロナウィルスのワクチンについて、臨床実験の結果70%の確率で有効性が確認されたと発表した。このワクチンは、既に95%の有効性が確認できたとされるファイザー社やモデルナ社が開発しているワクチンと比較すると有効性の面ではやや劣るが、非常に安価であり保存も簡単であることから世界各国で使用されることが期待できる。英国政府はこのワクチン1億回分を既に発注しており、アストラゼネカ社は来年中に30億回分を海外向けに供給できるとしている。同日に会見を実施したジョンソン首相も期待を示し、他の2社のワクチンも含めて来年4月のイースター(復活祭)までには国内のワクチンを必要とする人の多くに予防接種を行える体制が整い、国民の生活は徐々に元の日常に近づくであろうと述べた。

        ※11/23の英国の感染者数:15,450人(日本2,162人の7.1倍、緊急事態解除基準47人の329倍)
        ※11/23の英国の死者数:206人(日本7人の29倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 November 23, 2020, BBC (若林健一)
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