2020/11/20LROニュース(7)

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  • 2020.11.20 UP
    2020/11/20LROニュース(7)
    • 【1】 IMO/MEPCの合意は「小さな一歩」
      • 【1】海運はパリ協定の適用から除外され、世界のCO₂総排出量の3%が船舶から排出されている。11月17日に、IMO/MEPCで提案されたCO₂削減案は船舶のエネルギー効率化を軸としたもので、過半数の加盟国の支持を得たが、熱気にかけたものであった。英国の代表は、BBCに対し、「今回の条約改正案は船舶から排出されるCO₂削減に対する野心にかける案であり、他の加盟国と同様、英国も大変失望している。今後は、英国としてすべての加盟国に対して、力を合わせてclimate crisisに取り組むよう呼び掛けていく。」と語った。マーシャル諸島・ソロモン諸島・ツバルの3か国だけが反対意見を表明したが、マーシャル諸島の代表は「今回の提案は、2023年以前にCO₂の排出削減を開始し、可及的速やかに船舶からのCO₂排出量をピークアウトさせ、パリ協定の目的に整合した船舶から排出されるCO₂削減の道筋をつけるというIMOで2年前に合意された当初戦略に合致していない。」と発言した。多くの環境団体は、今回の提案を実施してもCO₂の削減効果はほとんどなく、船舶の交通量の拡大により、2030年までに船舶から排出されるCO₂の排出量は14%増加するという調査研究を引用し、IMOの合意内容に失望している。
      • 原文 November 18, 2020, BBC(長谷部正道)
    • 【2】 北極海の海氷が減少すると、米海軍の潜水艦艦隊の役割がさらに重要に
      • 【2】北極海では露、ノルウェー、カナダ及び米国が海軍の活動を活発化させ、北極海近傍国家を自称する中国も北極海を貿易ルートとして活用すべく自ら砕氷船の建造を進めており、また、露は大型砕氷艦に巡航ミサイルを搭載するなど、海氷の減少により各国による覇権争いが過熱している。米海軍のPhillip Sawyer中将は11月16日に行われたウェビナーにおいて、米海軍の潜水艦は過去数十年にわたり北極海を航行し、同盟国との合同演習や科学的調査などの活動を通して米海軍による同海域の把握に貢献してきたと述べた。また、米海軍の対潜水艦戦の中心を担う潜水艦の同海域における作戦行動は、海氷の減少により民間船舶や軍艦の航行が可能となる海域が増えるに連れその重要度を増していると語った。米海軍は今年3月には英国、カナダ、ノルウェー及び日本と北極海において隔年で実施している潜水艦演習(ICEX)を合同で実施し、5月にはノルウェー海において米海軍第6艦隊が英海軍と対潜水艦戦の合同演習を実施している。
      • 原文 November 17, 2020, Sea Power Magazine(若林健一)
    • 【3】 EU海洋再生可能エネルギー戦略案: 潮力・波力発電も促進
      • 【3】11月19日に公表された表記戦略案では、海洋エネルギー技術は2030年以降、欧州のエネルギーシステムと産業に大きく貢献すると期待されている。具体的には、波力/潮力発電は、風力/太陽光発電に比べ安定しており、発電量が予測可能であることから、EU島嶼部における脱炭素化に重要な役割を果たし、風力/太陽光発電の利用拡大によって不安定性が高まる送電網の安定性向上にも重要な役割を果たすことが期待される。同戦略においては、波力/潮力などの海洋再生可能エネルギーの発電能力を2030年までに1-3GW、2050年までに60GWに増強することを目指すとされているが、現状では波力/潮力の発電コストは非常に高く、実用化には大幅なコスト削減が必要で、30年間で60GWまで発電能力を拡大するためには、過去にどの新たなエネルギーが普及した際より比類なき速度で普及拡大する必要があると欧州委員会の担当者も認めている。現在、EU域内では合計13MW規模の波力/潮力発電の試験事業が実施されているが、波力発電技術の多くが依然研究開発段階である一方、潮力発電技術は商業化に近く、こうした事業は今後も優先的に送電網への接続が可能であるという。欧州では、2007年から2019年にかけて波力/潮力発電技術の研究開発に総額38.4億ユーロ(約4723億円)が投資されたが、その大部分の27.4億ユーロ(約3370億円)は民間資金に依存していた。
      • 原文 November 17, 2020, EURACTIV(植木エミリ)
    • 【4】 ITF: 中・豪・印政府に豪産石炭を積載した船舶の船員の交代等を要請
      • 【4】豪産の石炭を積載し、中国の港湾に到着した2隻の船舶が6月と8月から着岸を認められず、乗務している合計41名の船員の中には、この結果20か月以上の連続勤務を強いられ、疲労困憊しており、早急に船員交代を実施する必要があるとして、国際運輸労連は中・豪・印の各政府とIMOに対し、11月17日、早急な問題の解決を重ねて要請した。船主は早急に石炭を積み下ろして、船員の帰国を進めようとしているし、当該船舶の旗国であり、船員の出身国であるインド政府も中国政府に問題の解決を要請しているが、状況は膠着化している。近隣国からは、中国に代わって、当該石炭を買い取るという申し出もあるが、最低でも貨物の積み下ろしさえ許可されれば、当該船舶は中国の港湾を離れて、次の港で船員を交代させることができるが、中国政府はこうした解決策も拒否している。当該船舶が豪で石炭を積載し中国に向かった時点で、船員の継続労働期間は15か月に達しており、AMSAが出港を許可していなければこのような事態にはならなかった。ITFは10月の時点でも未だ40万人以上の船員が交代できずに、船上に取り残されているとしている。
      • 原文 November 17, 2020, 国際運輸労連(長谷部正道)
    • 【5】 トランプ政権:最後まで北極国家野生生物保護区の石油開発を進める試み
      • 【5】768万haの広さを誇るアラスカの北極国家野生生物保護区(Arctic National Wildlife Refuge : ANWR)は、米国に残された人類未踏の最後の広大な生物保護区で、トナカイや北極熊の群れやかもの生息地でもあり、長年に渡って保護されてきた。トランプ大統領は、ANWRの一部で石油開発を認めることを、同国内の化石燃料の生産を拡大する同氏の最も偉大な貢献な一つと豪語しており、土地管理局(BLM)は11月16日、ANWRのうち北極海沿岸の約61万haの地域を対象に、企業に対し開発したい土地の指定の受付を開始することを発表した。通常、開発を申請する企業が開発をしたい場所を特定したうえで、その申請に対するパブコメを実施し、提出された意見をBLMが慎重に検討したうえで、実際にどの地域のリース権を売却するかの最終告示を行うので、開発申請の公募から最終売却告示までには5-6か月を要するが、今回トランプ政権はコメントの受付期限を12月17日に設定し、全ての沿岸地域の平野を対象として、コメント締め切り30日後の1月17日に最終売却告知を発出することができるので、政権が交代する1月20日の直前にリース権を売却することが可能となる。
      • 原文 November 16, 2020, NY Times(植木エミリ)
    • 【6】 英国首相が25万人の雇用を創出する緑の産業革命のための10大政策を発表
      • 【6】標記10大政策の概要は以下のとおり。①全ての家庭の電力を洋上風力発電で賄うために、2030年までに現在の4倍の40GWの洋上風力発電施設を建設し、6万人の雇用を創出する。②2030年までに5GWの低炭素水素を、工業・交通・発電・家庭のために生産し、町全体が水素によって暖房できる都市をつくる。③Clean Energyとして、大規模原子力発電所から、次世代型の小型で先進的な原子炉まで、原子力発電を推進し、1万人の雇用を創出する。④世界をリードするWest Midlands/North East/North Walesの自動車産業が電気自動車の生産に転換することを支援し、電気自動車に電力を供給するための国家的なインフラの整備を図る。⑤自転車や徒歩による移動をしやすくするとともに、将来的にゼロエミッションの公共交通機関を導入する。⑥脱炭素化が困難な産業のグリーン化を支援するために、ゼロエミッション航空機と船舶の研究開発を支援する。⑦住宅・学校・病院などの建物をよりグリーンに、より暖かく、エネルギー効率を改善するために、2030年までに5万人の雇用を創出し、2028年まで毎年60万台のヒートポンプを設置する。⑧炭素回収貯留技術開発の世界のリーダーとなり、2030年までに1000万トンのCO₂を大気中から回収する設備を持つことを目標とする。⑨自然環境を保護・回復し、年間3万ヘクタールの植林を実施して雇用の維持・創出を図る。⑩上記目的を達成するための先端的な技術を開発し、City of Londonを世界的なgreen financeの中心地とする。
      • 原文 November 18, 2020, 英国政府(長谷部正道)
    • 【7】 政府がクリスマス期間における感染対策の緩和を検討
      • 【7】英国政府は、国民が今年のクリスマスをなるべく例年通りに過ごすことができるようにするため、クリスマスを含む数日間に限定して感染対策を大幅に緩和したい意向を示しており、来週にも全国的なロックダウンの解除後の対策とともに内容を明らかにするとみられている。政府は大人数で集まることや公共交通機関での移動は避けるように呼び掛けるとみられるが、政府の科学顧問を務める専門家は、クリスマスに人々が集まることで感染率が高い年齢層が感染した場合の致死率が高い高齢者と接触する機会が増えることから大きなリスクを伴うと警告しており、例年通りのクリスマスを過ごすことに重点を置きすぎていると指摘している。また、英国公衆衛生庁(Public Health England)の専門家は、クリスマスを含む数日間感染対策を緩和する場合、当該期間の前後にあっては逆に対策を強化する必要があると述べている。

        ※11/18の英国の感染者数:19,609人(日本1,694人の12倍、緊急事態解除基準47人の417倍)
        ※11/18の英国の死者数:529人(日本10人の53倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 November 19, 2020, BBC (若林健一)
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