2020/11/17LROニュース(7)

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  • 2020.11.17 UP
    2020/11/17LROニュース(7)
    • 【1】 中国における豪産原料炭積載船の滞船/船員問題に豪・印政府が抗議
      • 【1】国際運輸労連によれば、豪で生産された16万トンの原料炭を積載し、インド人の船員23名が乗船したインド籍の大型ばら積み船が、中国北部の京唐港に入港後5か月たっても着岸が許可されず待機を余儀なくされている。国際運輸労連によれば、乗船しているインド人船員は上陸も許可されず、精神的にも肉体的にも疲弊しきっており、船員の内の何人かは既に20か月以上船上で勤務を継続している。こうした状況を受け、豪の貿易大臣は、当該船舶を運航している海運会社とともに、中国政府に対して問題の解決を要請したが、中国外交部の報道官は、中国政府は待機中の船員に対する必要な便宜供与は行っており、中国側は港湾における疫病の防止・管理に関する規則や船員に対し要求される検疫上の規則に従っているだけとコメントしている。豪と中国の間の外交関係の緊張が続く中、この問題だけでなく、ヴィクトリア州からの木材輸出も禁止されている。豪外相は、中国政府による香港議会の民主派議員4名の資格停止について懸念を表明したが、在豪中国大使館は、豪政府に対して、香港議会の議員資格は中国の純粋な内政問題であり、豪が介入すべき問題ではないと警告している。京唐港周辺で同船と同様に待機を余儀なくされている船舶の数は約20隻に達し、約200万トンの原料炭が荷揚げできない状況になっており、これらの船舶を運航している海運会社と在中国インド大使館並びにインド政府も中国政府に対し、船員の交代を認めるよう要請し、インド船員組合はIMOと中国政府に1万通を超えるemailのメッセージを送り、迅速な問題の解決を要請している。
      • 原文 November 12, 2020, The Guardian(長谷部正道)
    • 【2】 世界の開発金融機関が石炭に対するファイナンスの停止に合意できず
      • 【2】仏政府の主催で世界の450の開発金融機関が集まって、最初のThe Finance in Common Summitが11月9日から12日にかけて開催され、再生可能エネルギー・エネルギー効率化・Clean Technologyに対する投資を促進することに合意した。一方、化石燃料への投資の停止については、前週に欧州の開発金融機関が合意したにもかかわらず、アジア開発銀行(ADB)が共同宣言への署名を拒否したのを筆頭に、アジア諸国の金融機関の反対で合意できず、2021年のCOP26までに石炭に対する投資に関してより厳しい制限ができないか継続協議することとなった。7月に各国に示された宣言案では、石炭ばかりでなく石油・天然ガスも含めた全ての化石燃料への投資の停止・削減が盛り込まれていたが、JICAやADBの強い反対で、テキストが骨抜きになったと情報筋は語っている。JICAの広報担当者は、JICAは2050年までに炭素中立を目指すという日本政府の方針に従って交渉し、共同宣言にも署名したと語っている。ADBの持続可能な開発・気候変動担当の局長は、ADBとして共同宣言の趣旨には賛成するものの、ADBの役員会の承認なしには署名できないと語った。
      • 原文 November 11, 2020, Reuters(長谷部正道)
    • 【3】 北欧3か国の軍事協力協定の締結とその真意
      • 【3】今年9月23日、フィンランド、ノルウェー及びスウェーデンの国防相が北極圏に位置するノルウェーのPorsangmoen基地で会合し、3カ国の軍事協力協定を締結した。3国は2018年に北欧防衛協定(Nordic Defence Cooperation:NORDEFCO)に関する枠組みに合意しているが、今回の合意は防衛能力や協力体制の強化に向けた実用的な取組みの第一歩として歓迎されている。今回合意した協定に関する具体的な情報は少ないが、各国の北部地域や広大な欧州の北極圏を取り巻く安全保障環境の急速な進展に対応することが主な目的であることは確かで、本質的には1950年代前半に3国が締結した秘密防衛協定の更新であるとの見方もあり、無線通信、報告及び識別プロセスにおける共通の手順を導入すると同時に、監視飛行や防空の指揮統制を調整するための取組みが強化されると見られている。米国務長官は昨年の北極評議会における演説の中で北極海における中国や露の活動を地域として対処すべき安全保障上の課題として取り上げるなど、米国は中国や露に対してゼロサム的な態度をとっており、今回の合意の背景には安全保障に関する米国への信頼性に対する懸念ではなく、むしろ北極海における中国や露の活動に対する米国のこうした過剰な反応に対する懸念があると考えられる。
      • 原文 November 12, 2020, High North News(若林健一)
    • 【4】 英国財務報告評議会:企業に気候変動に関する情報開示の強化を要請
      • 【4】英国財務報告評議会(FRC)が標記報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①ビジネスモデルや会社の戦略に影響を与える気候変動問題について企業は真剣に検討していない。②いくつかの企業は炭素中立などの目標を立てているが、目標達成のための具体的対策や、どのように当該対策の実施状況を監視し、実行を担保していくかなどの情報が開示されていない。③特に財務関係書類における気候変動問題に関する情報公開が遅れている。④FRCは投資家等の期待に応えられるよう、気候変動問題に関する企業の情報開示を改善する必要があると考える。⑤FRCは気候変動対策のような直接財務と関係のない情報の開示に関する国際的な基準を創設することを支持するが、当面の対策としては、「気候変動関連財務情報の開示に関するタスクフォース」が勧奨する情報開示基準と「持続可能な会計基準審議会」が作成した基準に従い、公益に関係する企業は気候変動に関する情報を開示することを奨励する。
      • 原文 November 10, 2020, 英国財務報告評議会(長谷部正道)
    • 【5】 商業規模でのゼロエミッション船試験事業のための青写真
      • 【5】エネルギー転換委員会がGetting to Zero Coalitionのために作成した標記報告書の概要は以下のとおり。①新たな技術とビジネスモデルを確立するために、今後3-4年以内に、実効性のあるゼロエミッション船の試験を行う必要がある。②そのためには㋐早期の実用化が見込まれる技術の試験と試験実施に必要な政府の許可を得るために関係者が協力すること。㋑コストの低い再生可能エネルギーを優先的に得ることができる場所を試験海域に選ぶこと。㋒既存のインフラや資産を有効活用すること。㋓代替燃料の供給施設や燃料補給船については共同で投資すること。㋔物流チェーンの関係者と新たなgreen shippingのためのvalue chainを結成し、開発コストを消費者も含めたvalue chain全体で負担することが必要である。③以上のようなコスト削減対策やリスク分散を図れば、最初の商業的に採算の取れるゼロエミッション船の開発コストを30%から50%削減することが可能だが、海運エネルギーの転換には政府や荷主の支援が不可欠である。
      • 原文 November 14, 2020, Energy Transition Commission(長谷部正道)
    • 【6】 EU:CO₂削減目標の引き上げに伴い排出権取引制度も強化
      • 【6】欧州委員会は、2030年までのCO₂削減率を55%に引き上げることを提案しており、この目標を達成するため、排出権取引制度(ETS)を含むEUの気候変動関係の規則を2021年6月に再検討することが予定されている。現行のETS制度の下でも既に、石炭火力発電のコストは風力・太陽光発電のコストより割高になっているが、欧州気候法に基づき2050年までの炭素中立を実現するには、再生可能エネルギーへの転換を更に促進する必要があるため、ETSに関しても更なる強化が検討されている。現在のEUにおける再生可能エネルギーの割合は約20%で、2030年までに32%まで引き上げることが2018年に合意されているが、2030年までにCO₂を55%削減するには、この比率を更に38-40%に引き上げる必要がある。また2030年までの削減目標を達成するには、現在32.5%であるエネルギー効率化目標を38-39%に引き上げる必要もあるが、エネルギー効率化目標は加盟各国に対して法的拘束力がなく、加盟国はこれまでにもエネルギー効率化目標の達成に失敗してきており、目標の達成には多大な努力を要すと見込まれている。
      • 原文 November 13, 2020, EURACTIV(植木エミリ)
    • 【7】 ジョンソン首相が感染者と接触し2週間の自主隔離を実施
      • 【7】ジョンソン首相は11月12日に首相官邸で複数の保守党議員と35分間にわたり面会したが、15日になって会談した議員のうちの1人がコロナウィルスに感染していたことが判明し、コロナウィルスの検査・追跡制度を運用している国民保健サービス(NHS)から連絡を受けたジョンソン首相も同日夜から2週間の自主隔離を実施することとなった。ジョンソン首相は今年3月下旬にコロナウィルスに感染し、その後3日間の集中治療を受けているが、現在のところ健康状態に問題はなく、官邸において業務を継続するとしている。首相はビデオメッセージを通して国民に対して、コロナウィルスの感染拡大を抑えるために規則を遵守することやHNSから連絡を受けた場合にはその指示に従って自主隔離を行うよう改めて要請した。

        ※11/15の英国の感染者数:24,962人(日本1,738人の14倍、緊急事態解除基準47人の531倍)
        ※11/15の英国の死者数:168人(日本3人の56倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 November 16, 2020, BBC (若林健一)
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