2020/11/02LROニュース(7)

NEWS


※LROニュースの内容については、有料メールニュースなど営利目的での転載はご遠慮頂くとともに、2次使用の際はLROニュースからの転載である旨を明示していただきますよう、お願いいたします。

トップページ > LROニュース > 2020/11/02LROニュース(7)

記事アーカイブ

  • 2020.11.02 UP
    2020/11/02LROニュース(7)
    • 【1】 北極海における船舶による重油燃料使用の実態(2019年)
      • 【1】北極評議会の北極海海洋環境保護(PAME)WGは10月20日、標記報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①IMOのPolar Codeに定める北極海域に入域した船舶の数は漁船(725隻)・一般貨物船(190隻)・ばら積み船(141隻)・旅客/クルーズ船(98隻)・化学タンカー(85隻)・タグ(84隻)・冷凍船(84隻)・石油タンカー(81隻)等合計で1725隻だった。②これらの船舶が使用する燃料は、圧倒的多数(1056隻)の船舶が舶用ガスオイル・舶用ディーゼルなどの軽質油を使用しているが、重油を使用している船舶も165隻ある。③重油を燃料として使用している船舶の内訳は、ばら積み船(53隻)・旅客船(28隻)・LNGタンカー(26隻)・石油タンカー(20隻)などである。④北極海域で運航する船舶が消費した燃料の量は2016年から2019年の3年間で82%も急増しており、重油燃料を使用している船舶数も117隻から165隻と4割以上急増している。⑤2016年には、北極海域で運航するLNGタンカーはゼロだったが、ヤマルLNG事業の始動により、3年間で29隻となり、2019年には全船舶が消費する燃料の28%を使用するまで急拡大している。⑥北極海域で使用される重油燃料の量は、2020年の硫黄含有分規制の実施と、2029年の北極海における重油燃料の禁止と、2050年までの船舶から排出されるCO₂排出量の半減という3つの節目ごとに大きく変化することが予測される。
      • 原文 October 20, 2020, PAME(長谷部正道)
    • 【2】 IMECとITFが共同でマニラに船員交代のための検疫検査施設を開設
      • 【2】国際船員雇用者委員会(IMEC)と国際運輸労連(ITF)は、船員交代を促進し、マニラにおける検疫体制の信頼性と偽PCR検査証明書の問題を解決するために、マニラ市内の2つのホテルを確保し、最大限300人の船員がPCR検査を受け、2週間食事の提供を受け、検温しながら検疫期間を過ごす施設を10月28日から共同で開設した。IMECのCEOは会員企業に同施設の積極的な利用を呼び掛け、マニラで成功すれば、インドとウクライナにも同様の施設を開設したいと述べた。PCR検査証に関する不正を防止するため、香港の技術企業と提携して、ブロックチェーン技術を用いた検査証明書を発行する。検査の質を確保するため、シンガポール政府はBureau Veritasが実施している検査・検疫施設自体の認証制度を支援しているが、IMECはシンガポールや豪政府が行っているような国家が関与した公的承認制度を他の政府も導入することを期待している。
      • 原文 October 28, 2020, BIMCO(長谷部正道)
    • 【3】 比が中国に対抗して海洋準軍事組織を創設へ
      • 【3】南シナ海において準軍事組織を使って勢力拡大を図る中国に対抗するため、比が海洋準軍事組織(the Cafgu Active Auxiliary Service :CAAS)の創設に動く可能性がある。中国の準軍事組織は小型船を使用して南シナ海の島々に押し寄せ、最近では比軍が常駐する南沙諸島のパグアサ島へ補給物資や建築資材を輸送する船舶の入港を阻止している。同じく南沙諸島や西沙諸島を巡り中国と争うベトナムも2009年に海洋準軍事組織を創設しており、両国はこのいわゆる「グレーゾーン」戦略を国家的な取組の一環として捉えている。比海軍は、CAASは陸軍出身者で組織され、南シナ海の第一線で活動する海軍の部隊によって訓練を受けることになるとの見方を示し、また、武器は装備せずに位置情報装置や通信設備のみを備え、主に海域の状況把握や巡回業務に当たることになると述べた。慢性的な予算不足に苦しむ比軍に対して、議会の中でも対中国を念頭に比軍の予算の増額を後押しする動きも見られる。一方で、軍や沿岸警備隊の能力強化を図るべきとの意見や、中国の行動をエスカレートさせる口実を与えることになるといった意見もあり、比国防長官は、CAASを維持するだけの予算の確保が困難であるとの理由から、比大統領が今はCAASの創設を見送るべきと発言したことを明らかにしている。
      • 原文 October 29, 2020, Asia Times(若林健一)
    • 【4】 シンガポール海峡東航航路における7月から10月の間の海上盗難事件
      • 【4】アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)情報共有センター(ISC)による最近の報告では、シンガポール海峡東郊レーンで1週間のうちに3件の海上窃盗事件が報告されており、同海域はいまだこの種の犯罪の多発海域である。情報融合センター(Information Fusion Centre:IFC)は2020年7月から10月の間の同海域における海上窃盗事件に関する概要を公表したがその概要は以下のとおり。①5件の窃盗事件(既遂)と7件の未遂事件が報告されており、被害船舶は貨物船が10隻、タンカーが1隻、艀を曳航中のタグボートが1隻であった。②多くの事件が午後11時から午前3時の間に、インドネシアのバタム島やビンタン島沖合の東航レーン内で発生している。③4人から6人の賊が小型艇を使用して、7ノットから12ノットの低速で航行する乾舷が低い船舶を標的としている。④タンカーや貨物船が被害に遭った事件では、多くの賊が刃物や鉄パイプで武装してエンジンの予備品などを狙って犯行に及んでおり、同じ犯行グループが一晩のうちに数件の犯行に及んでいる可能性もある。⑤タグボートが被害に遭った事件では、賊は武装せずに船の備品を狙って犯行に及んでいる。
      • 原文 October 29, 2020, Safety4Sea(若林健一)
    • 【5】 スクラバー投資の回収目途が立たない海運各社
      • 【5】IMO 2020規制が開始された年初の時点では、重油燃料と低硫黄分規制適合油の価格差はトン当たり300ドルあることが見込まれ、例えばアジア=欧州航路を運航するULCVの場合。スクラバーの投資コストは18か月以内で回収できると強気の予測をしたコンテナ船社が多くあり、例えば、現代商船は80%、Evergreenは57%のコンテナ船にスクラバーを設置し、大手では積極派のMSCが現在170隻、さらに今後58隻のコンテナ船にスクラバーを設置し、当初スクラバー設置に慎重だったマースクさえも現在97隻、さらに今後29隻にスクラバーを設置する予定である。しかし、原油価格の暴落とコロナ経済不況によって、規制適合油の価格が当初予測の約半分となり、それに伴い重油燃料との価格差も40ドル程度に縮減しているため、スクラバー投資を回収できる見通しが大幅に遠のいた。さらに、開放型スクラバーからの排水を禁止する港湾が増え続けており、今後いつまでスクラバーを使用することが可能かさえ見通せない状況となってきている。こうした状況にもかかわらず、現状では全ての航路の運賃が高止まりし、バンカーコストも低迷した状況が続いて、海運会社は高収益を維持しているため、こうした投資判断の見込み違いは大きな問題となっていない。
      • 原文 October 29, 2020, The Loadstar(長谷部正道)
    • 【6】 WMO: ラニーニャ現象が拡大
      • 【6】ラニーニャ現象とは、赤道付近の中央部/東部太平洋での海面温度が著しく低下し、熱帯の大気の循環を変化させ、風速・気圧・降雨量に影響を与える現象だが、世界気象機関(WMO)は10月29日、ラニーニャ現象が拡大していると発表した。WMOによるラニーニャ/エルニーニョ現象に関する予報は、各国政府が農業・保健・水源・災害管理といった気候の影響を受けやすい分野の対応計画の作成に利用されているが、WMOはさらに一歩踏み込んで、パンデミックの影響で対応能力が逼迫している国際人権団体に対し、ラニーニャ対策に関する支援を強化すると表明した。近年では、2010年から2011年にかけて強力なラニーニャが発生し、翌年の2011年から2012年にかけても中規模のラニーニャが残ったが、今年は大規模と中規模の間くらいの規模になると見込まれており、年末まで継続する確率は90%、来年第一四半期まで継続する可能性は55%であるとWMOは予測している。
      • 原文 October 29, 2020, WMO(植木エミリ)
    • 【7】 対策の効果が見えないなか新たに数百万人が最も厳しい制限措置の対象に
      • 【7】イングランドでは既に約870万人が最も厳しい制限措置(Tier3)の対象となっている。政府は人口230万人を擁するウェスト・ヨークシャーも新たにTier3の対象とすることを決定し、また、今後ロンドン(人口900万人)をこの対象に含める可能性も否定していないが、経済への影響も考慮して全国的なロックダウンの実施には否定的な立場を維持している。しかし、政府が制限措置の強化に踏み切った9月下旬から国内のコロナウィルス感染者の実行再生産数(R)の値は1.16から1.56に上昇しているとする調査結果や、Tier3の対象となっていないロンドンやイングランドの南東部、東部、南西部などでもRの値が既に2.0を超えているとする調査結果も出ており、多くの科学者が現在の政府の対策では感染拡大を抑えるには不十分であるとして、全国的なロックダウンの実施を求める声が高まっている。

        ※10/29の英国の感染者数:23,065人(日本731人の32倍、緊急事態解除基準47人の491倍)
        ※10/29の英国の死者数:280人(日本3人の93倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 October 29, 2020, Mirror (若林健一)
  • 資料閲覧 その他