2020/10/30LROニュース(7)

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  • 2020.10.30 UP
    2020/10/30LROニュース(7)
    • 【1】EU NAVFOR/ATALANTA(ソマリア担当)と海自がインド洋で共同演習
      • 【1】ソマリア沖やアデン湾で海賊対処のためのATALANTA作戦を実施している欧州連合海軍部隊(EU NAVFOR)は、同じく同海域で海賊対処の任務に従事する日本の海上自衛隊と緊密な連携を保ち、両部隊の戦術的な手続きの効率性を高めるべく多くの共同演習を行っている。直近の共同演習は10月5日に行われ、スペインのフリゲート艦と海上自衛隊の護衛艦おおなみが洋上補給を想定した訓練や射撃訓練などを実施し、さらにジブチを基地とするドイツのP-3哨戒機も参加した。10月15日にはジブチ沿岸で観艦式が行われ、海上自衛隊の護衛艦おおなみ、イタリアやスペインのフリゲート艦、ドイツやスペインの哨戒機などが参加した。観艦式が終了し各船が入港した後には、港内で各国の代表者が出席してテレビ会議を開催し、スペインのロタにあるATALANTA作戦の司令本部、ベルギーのブラッセルにある欧州対外活動庁、東京の防衛省などと中継を結び、共同演習などから得られた教訓と海上における安全保障の分野での協力関係のさらなる深化について議論が交わされた。
      • 原文 October 27, 2020, EU NAVFOR(若林健一)
    • 【2】英:気候変動委員会の2020年進捗報告書に対する政府の対応
      • 【2】英国政府は10月15日、気候変動委員会(CCC)が作成した、過去1年間の英国のCO₂排出量の削減状況および政策の影響を評価した年次報告書に対して表記報告書を発表したところその骨子は以下のとおり。①環境に配慮し自然災害に対して強い(green and resilient)復興を実現するアプローチとして、2050年までの炭素中立実現と結びついたBuilding Back Greener政策を展開する。②Clean Growth Strategyで主要な分野として特定された、電力・建物・炭素回収利用貯留(CCUS)と水素を含む産業・交通・天然資源(農林業/土地利用/廃棄物/フッ素化ガス)におけるGHG排出削減状況を評価する。③今世紀末までに地球の気温が2℃(最大4℃)上昇することを前提にし、第2次気候変動リスク評価書で示された優先的に対応すべきリスクに対して、自然災害に対する抵抗力を持った適応策を検討する。④経済の脱炭素化および炭素中立の実現に必要な行動の多くが地方分権政府の権限下にあることを認識し、スコットランド・ウェールズ・北アイルランドにおけるCO₂削減対策の進捗状況を概説する。⑤2021年にグラスゴーで開催される COP26の主催国として、英国が国際的な気候変動対策に果たす役割について概説する。
      • 原文 October 15, 2020, 英国政府(植木エミリ)
    • 【3】世界の海洋保護区を戦略的に5%拡充すれば漁獲量が20%以上増加
      • 【3】各国政府は国際的な目標に沿って海洋保護区(MPAs)の拡充に努めているが、MPAを設定すると漁業活動が制約され、地域住民等の食料調達に問題が生じるという定型的な考え方がMPAを拡充する上で制約となってきた。一方で、沿岸国の多くは過剰漁獲の問題に直面しており、カリフォルニア大学の研究者達は、過剰乱獲が行われている海域にMPAを設定することで、漁業資源の保全と漁獲量の増加の両方に裨益しうるような戦略的なMPAネットワークの構築方法がないか、商業的に価値のある1338種類の魚種の分布・生涯の回遊パターン・漁業高などの情報を収集して分析を行った。その結果、世界全体の既存のMPAを戦略的に5%拡充するだけで、漁業資源が復活して、漁獲高が現状と比較して年間900万から1200万Mt増加することが分かった。こうした結果により、MPAの設定にあたっては、海洋資源の保全だけでなく、同時に漁獲高を増加するための戦略的な視点が必要であることが明らかとなった。
      • 原文 October 20, 2020, PNAS(植木エミリ)
    • 【4】ギニア湾におけるハイリスク海域の拡大を労使で合意
      • 【4】海賊による襲撃や誘拐事件の増加を踏まえ、国際海事使用者委員会(IMEC)と国際団体交渉協議会(IBF)の労使協定(collective bargaining agreements)によって指定されているギニア湾やインド洋におけるハイリスク海域が今年11月1日に拡大される。ギニア湾では、現在指定されている海域はナイジェリアとベナンの沿岸域のみであるが、今回コートジボワールからコンゴ・アンゴラ間の国境線に至るまでの広大な海域に拡大される。インド洋では、現在指定されている海域はソマリア沿岸域のみであるが、インド洋西部及びイエメン・サウジアラビア間の国境線に至るまでの紅海まで拡大される。ただし、紅海の海上警備航路帯(MSTC)は含まれるが、Warlike Operations Areasやハイリスク海域1及び2aは含まれない。船員は、今回拡大された海域において海賊の襲撃を受けた場合には基本給と同額のボーナスの支給を受け、襲撃により死亡し又は障害を負った場合には2倍の補償金を受け取ることができる。
      • 原文 October 21, 2020, Nautilus International(若林健一)
    • 【5】カナダ議会で船舶からのCO₂排出制限に関する独自の国内法制定の動き
      • 【5】米国下院天然資源委員会において、EU のMRV制度と同様の制度を米国にも導入することを含む海洋気候変動解決法(Ocean Climate Based Solutions Act)案が提案されたが、カナダでも、船舶からのCO₂排出量をIMOの基準ではなく国内法の制定によって規制しようとする動きが新民主党議員の主導によって始まった。具体的には、国内法によって船舶からのCO₂排出削減のための公式な枠組みや削減目標を定め、連邦予算によってMRVなどの必要な準備を実施することを提唱しており、海運分野に炭素排出権取引制度の適用を推進しているEUや米国に続き、船舶からのCO₂排出量に関する規制の分化が更に進行する恐れがある。
      • 原文 October 28, 2020, Splash 247(植木エミリ)
    • 【6】米国が中国と対抗するためにモルジブに大使館を開設
      • 【6】モルジブが英国から独立した1966年に米国はモルジブと国交を樹立したが、現在モルジブに米国の大使館や領事館は設置されておらず、駐スリランカ大使や大使館職員が定期的にモルジブを訪問しているのみである。10月28日米国務長官はモルジブを訪問して同国の大統領や外務大臣と会談した。米国務大臣は会談後の記者会見で、モルジブに米国大使館を設置する考えを明らかにするとともに、今回の方針は発展を続ける両国の関係と米国のモルジブやインド太平洋地域に対する献身を反映したものであると述べた。今回の動きは自由で開かれたインド太平洋構想を推し進め、拡大する中国の影響力を抑え込む狙いがあると見られている。近年は米艦船が定期的にモルジブに入港しているが、米国とモルジブは9月10日に防衛協定を締結しており、これまで他国の軍隊が自国の国境付近に存在することに難色を示してきたインドもこれを歓迎している。米国はコロナウィルスの感染拡大を受けてモルジブに対して既に200万ドルの支援金を提供しているが、今後さらに経済支援を目的に数百万ドルの支援金も提供することを約束している。
      • 原文 October 28, 2020, Voice of America(若林健一)
    • 【7】ワクチンの効果や完成時期については未だ見通せず
      • 【7】10月28日、英国の環境・食糧・農村地域相は、現在開発が進んでいるコロナウィルスのワクチンの完成時期やその効果については未だ見通しが立っておらず、さらに初期段階のワクチンについては完璧なものには至らず、すべての人に対して効果を発揮するとは限らないとの見方を示した。

        ※10/28の英国の感染者数:24,701人(日本649人の38倍、緊急事態解除基準47人の526倍)
        ※10/28の英国の死者数:310人(日本5人の62倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 October 28, 2020, Reuters (若林健一)
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