2020/10/29LROニュース(7)

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  • 2020.10.29 UP
    2020/10/29LROニュース(7)
    • 【1】英国:環境に配慮した復興に果たす再生可能エネルギーの役割
      • 【1】英国においては、2010年代から着実に風力発電を推進し、2015年からは差額保証契約(Contract For Difference: CFD)制度の下、洋上風力発電事業者がコスト削減に努め2020年までに、競争可能なレベルまでコスト削減に成功したことが洋上風力発電成功の鍵となった。最新のGlobal Wind Databaseによれば、英国内の風力発電の投資額は約30億ドル(約3140億円)に達し、2020年末までに1GW以上の風力発電施設が稼働し、これまでの累計発電可能量は24.3GWとなった。英国政府は10月にBuild Back Greener政策の中心的な柱として、今後1.6億ポンドから2.1億ポンド(約286億円)を投資して、港湾を洋上風力発電産業の拠点にすることを発表した。英国政府はこれまで再生可能電力事業者のコスト削減努力を促すために、国家助成を受けられる再生可能エネルギーの事業量を制限してきたが、2021年にグラスゴーで開催するCOP26の開催国として、2050年までの炭素中立目標に真剣に取り組むためにも、従来の方針を転換し、洋上風力発電の規模拡大に努め、2030年までに発電能力を40GWまでに引き上げることを目指している。
      • 原文 October 26, 2020, Forbes(長谷部正道)
    • 【2】EU Green Deal/ Fit for 55 Packageと具体的な2021年作業計画
      • 【2】2019年12月に、欧州委員会は2050年に炭素中立を達成するためのEuropean Green Deal (EGD)を発表し、今年の9月19日には、欧州委員会の委員長は初めての施政方針演説の中で、対1990年実績比で、2030年までに最低でもGHGの排出量を55%削減すると表明し、併せてFit for 55 Packageと称する一連の政策を発表し、10月19日に発表された2021年の作業計画においても、EGDに関する具体的な政策を明らかにしたところ主要政策は以下のとおり。①環境規制の厳しいEUからエネルギー多消費型の産業が域外国に移転する(carbon leakage)を阻止し、EU内の環境規制を遵守する事業者に公平な競争条件を確保するために、炭素国境調整制度を導入。②EU排出権取引制度の適用範囲の拡大と排出許容枠の縮減などの運用強化。③GHG排出削減と環境技術開発を促進し、再生可能エネルギーが税制上優遇されるようエネルギー税制指令を改正。④公共機関に対し、強制力のある一定割合のグリーン調達基準を課すとともに、航空・海運などの事業者に一定割合の再生可能低炭素燃料の利用を義務付けるために再生可能エネルギー指令を改正。⑤エネルギー産業を対象にメタン漏出に関する強制的なMRV制度を導入するとともに、コペルニクス事業を活用して、衛星によるメタン排出企業の監視を強化。⑥電気自動車の普及など、電力・バイオ燃料・水素などの再生可能燃料を交通分野に積極的に導入。⑦携帯電話・ラップトップなどの電子機器の回収・再利用などを含む循環型経済の推進。
      • 原文 October 27, 2020, Latham & Watkins(長谷部正道)
    • 【3】バイオ燃料の技術的な課題と解決策
      • 【3】DNV GLが脂肪酸メチルエステル(FAME)・バイオ液体燃料(BTL)・硬化植物油(HVO)などのバイオ燃料について技術的な課題と解決策について取りまとめているところその概要は以下のとおり。①バクテリアやカビなどの微生物が燃料中に繁殖すると、スラッジの量を増加させ、フィルターやパイプの目詰まりを起こす可能性がある。タンクの頻繁な洗浄や殺生物剤を燃料に添加することで、微生物の繁殖を抑えることが可能か。②バイオディーゼルは時間がたつと酸化劣化して、ポリマーなどの不溶性の物質を形成し、これがパイプや機関にたまると船舶の運航効率が劣化する。さらに進むと、燃料の酸性度が増して、燃料システムの腐食や燃料ポンプや噴射装置が詰まることもある。従って、長期間保存されていたバイオ燃料は使用せず、生鮮品と同様に給油したらすぐに使用する必要がある。抗酸化剤を燃料に加えることで使用可能期間を延長することも可能か。③バイオディーゼルの濃度が高いと通常のディーゼルに比べて、曇り点が上昇し、気温の低下により、燃料の粘性が高まったたり、フィルターの目詰まりを起こしやすくなる。従って、バイオ燃料の曇り点を把握し、保存や輸送の際に曇り点以上の温度を維持することが必要となる。
      • 原文 October 14, 2020, DNV GL(長谷部正道)
    • 【4】ReCAAP ISC 週間報告書(10月20日から26日)
      • 【4】アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)情報共有センター(ISC)に、10月20日から26日まで通報された事件は、重要度4(賊は武装せず、乗組員の負傷なし)の武装強盗事件が3件でその概要は以下の通り。いずれもシンガポール海峡東航レーンを航行中の船舶が被害に会っており、今年に入り同海域で発生した事件は28件を数え増加傾向にあることから、ReCAAP ISCは10月26日に航行警報を発して注意を呼び掛けている。①10月26日午前1時30分ころ、インドネシアのバタム島から約3.2海里沖合を航行中の貨物船が海上交通情報センター(VTIS)から同船に小型艇が接舷しているとの連絡を受けた。機関室で3人の賊が目撃され警報を作動させたところ逃走する4人の賊が目撃された。同船はその後バタム錨地に錨泊しインドネシア海軍による船内捜索を受けた。②10月26日午前0時46分、インドネシアのバタム島から約2.3海里沖合を航行中の貨物船がVTISから同船に小型艇が接舷しているとの連絡を受けた。船内で5人の賊を発見し警報を作動させたところ賊は何も盗らずに逃走した。③10月25日午後11時09分、インドネシアのバタム島から約3.1海里沖合を航行中の貨物船の機関室入口付近で1人の賊が目撃されたが、警報を作動させたところ賊は何も盗らずに逃走した。
      • 原文 October 27, 2020, ReCAAP ISC(若林健一)
    • 【5】液化グリーン水素を燃料とする船舶開発にEUが800万ユーロを助成
      • 【5】ノルウェーの海運会社のWilhelmsen・海事技術企業のKongsberg Maritime・北欧最大のエネルギー企業のエクイノールをはじめ、仏・独・蘭・英・スイスの14社は、再生可能エネルギーから製造される液化水素(LH2)を燃料とする新たな試験的なro-ro船の設計と建造に加え、LH2の供給網と供給プラットフォームを作ることを目的とするHySHIP事業を共同で立ち上げ、EUの研究開発基金のHorizon 2020から800万ユーロ(約9.8億円)の助成を受ける。船舶は2024年から、Wilhelmsen社がノルウェー沿岸の水素供給ハブにLH2を運搬するのに使用される。この試験事業により、LH2を燃料とする船舶の建造と運用コストを下げて、欧州全域に普及させることを目的とする。船舶には1000kWhのバッテリーと3MWのプロトン交換性高分子膜(PEM)水素燃料電池を搭載し、LH2はベルゲンの北方のMongstadにエクイノールと仏の産業ガスメーカーのAir Liquide等が建設するプラントで製造される予定。HySHIP事業はこの3MW級のro-ro船に加えて、1MW級の内陸水運に使用されるタンカーバージと20MW級の外航ケープサイズのばら積み船も開発することを目指す。
      • 原文 October 22, 2020, Wilhelmsen(長谷部正道)
    • 【6】EU Green Dealは環境損害を他国に押し付ける結果に
      • 【6】EUは中国に次いで世界第2位の農産品輸入国であり、2019年にEU域内で消費された作物の1/5と精肉・乳製品の3/5はEUより規制の緩い国から輸入され、当該国との貿易協定においても、環境に配慮した持続可能な農業を行うことを輸入の条件として定めていない。EUが農産品を輸入する貿易相手国の「持続可能性」の定義はそれぞれ異なっており、EU域内で使用が厳しく制限/禁止されている農薬・除草剤を使用した農産物や遺伝子組み換え農産物をEUに輸出している。結果として、EU域内では環境に配慮した農業を実施する半面で、域外諸国に農産物の生産を外注することにより、地球全体の環境を損なっている。林業では、1990年から2014年の間にEUはギリシャの面積に等しい1300万ヘクタールの森林を新たに拡充した一方で、EU域外諸国では、EU域内で消費される作物の栽培のために1100万ヘクタールの森林が伐採され、その3/4は、世界最大級のCO₂吸収源であり、類まれな生物多様性を誇るブラジルとインドネシアの森林が油糧種子の栽培のため犠牲になっている。EU Green Dealによって世界全体の持続可能性を高めるためには、以上のような域外国へ環境損害を添加している問題に取り組む必要がある。
      • 原文 October 27, 2020, Nature(植木エミリ)
    • 【7】感染第2波の長期化をおそれ全国的なロックダウンの実施を求める声が高まる
      • 【7】10月27日、英国ではコロナウィルスの感染による1日当たりの死者数が367人に達し、422人の死者数を記録した5月27日以降で最多を更新した。政府は、感染拡大の第2波による死者数のピークは、感染拡大の第1波のときに比べれば低くなるものの長期化し数カ月にわたって継続する結果第1波のときよりも多くの死者がでるとの見通しを立てているとの情報もあり、全国的なロックダウンの実施を求める声が高まっている。今年3月に全国的なロックダウンを実施した際に政府に助言を行った疫学者は、現在政府が導入している対策では感染者や死者数を早期に減少させることはできず、少なくとも来年春までは感染者数や死者数の発生状況は高い水準を維持するとの見方を示している。一方で、既に最も厳しい対策が実施されているイングランド北部の地域を中心に、政府に対して出口戦略を求める声も高まっている。

        ※10/27の英国の感染者数:22,885人(日本409人の56倍、緊急事態解除基準47人の487倍)
        ※10/27の英国の死者数:367人(日本7人の52倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 October 27, 2020, Evening Standard (若林健一)
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