2020/10/27LROニュース(7)

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  • 2020.10.27 UP
    2020/10/27LROニュース(7)
    • 【1】AMSA: 船員の長期継続労働で自動車輸送船をメルボルンで拘束
      • 【1】国際運輸労連(ITF)は、日本の海運会社が運航するパナマ籍の自動車運搬船で、当局が許可する範囲内の期限を超えて継続労働する船員がいるとの情報を得て、ITFの検査官がメルボルン港に入港した同船に乗船して状況を確認したところ、5人の船員がほぼ12か月、2人の船員が14か月、船長を含む3人の船員が15か月以上船上で連続乗務していたことが判明した。旗国であるパナマは、9月14日以降は、海事労働条約が定める11か月の労働契約期間の3か月の延長を例外的な場合にのみしか承認しないとしており、また、豪海上安全庁(AMSA)は、10月1日以降、船上における最大継続労働期間を14か月としているので、15か月以上の連続乗務は旗国と寄港国の両方の規制に違反していたことになる。ITFからの通報を受けたAMSAは同船を拘束し、同船は規制違反の対象となった船員を帰国させ、新たな船員を補充するまで同港に拘留されることとなる。
      • 原文 October 22, 2020, ITF(長谷部正道)
    • 【2】北極海の海氷が凍結しない記録を更新
      • 【2】北極海のラフテプ海では、平年では既に海面の凍結が始まっているが、2020年は北部ロシアに暖気が異常に長く留まっていることと、大西洋の海水の流入によって、観測史上初めて未だに凍結が始まっておらず、気候学者たちは北極圏全体に深刻な影響が及ぶことを懸念している。今年の夏の前例のない熱波と、昨年できた海氷が極端に速く融解したことを受けて、ラプテフ海の海水温は平年より5℃以上上昇しており、日照時間が1日の内わずか1,2時間であるにもかかわらず、一度海洋に蓄積された熱が大気中に放出されるのには長い時間がかかる。北極海の海水は、冷たい表面の海水の層と暖かい深い海水の層が分離することによって表面の冷たい海水が凍結するが、気候変動の影響により大西洋から暖かい海流が流れ込むことによって、この冷たい海水と暖かい海水が分離するのを妨げ、海水面の凍結を難化させている。コロラド州大学の研究者は、GHG排出量を体系的に削減しない限り、21世紀半ばまでに北極海に氷がない夏が訪れる可能性は高まり続けると警告している。
      • 原文 October 22, 2020, The Guardian(植木エミリ)
    • 【3】海賊対策としての人工知能活用の可能性
      • 【3】海賊対策は現在も国際法規、世界貿易、船員の安全・安心などに対する困難な課題であり続け、国際海事機関(IMO)や専門機関なども船舶を海賊から保護するための様々なガイドラインや勧告を発出しているが、海賊による襲撃のリスクが高い海域を航行する場合には、厳重な見張りの励行や適切なレーダーによる監視の継続が不可欠である。一方で、海賊の襲撃を受けた多くの船員は接近する海賊に気が付かなかったと証言しており、また、船員の疲労や暗夜、視界不良時なども考慮すれば、扮装した小型船を使用して接近する海賊の発見を乗組員のみに頼ることには限界がある。海賊による襲撃を防ぐためには周囲の状況把握が不可欠であるが、人工知能によるデータ分析を活用して海賊に対する警報の完全自動化を実現することで、船員が海賊の襲撃に対して準備を行う時間を確保することができる。例えば、過去の事例や収集した情報を基にAIは海賊行為と疑われる行動パターンを見分けることができ、周囲を航行する船舶の隻数や針路・速力などを把握することで乗組員による周囲の状況把握能力を向上させる。また、レーダーにTBD技術(Tack Before Detect)を採用することで通常のレーダーでは困難な小型艇の検知も容易となる。さらに、海賊による襲撃が行われた場合には、記録された画像やデータを取締り機関に提供して事件捜査や犯人の訴追に役立てることにより、海賊による被害を防止することができる。
      • 原文 October 24, 2020, Hellenic Shipping News(若林健一)
    • 【4】ICS: IMO ISWG GHGの合意結果を歓迎
      • 【4】標記コメントの概要は以下のとおり。①合意されたMARPOL条約の改正案は、2030年までに、輸送単位当たりのCO₂排出量(Carbon Intensity: CI)を2008年実績比で40%削減するための法的拘束力のある規定が盛り込まれており、2050年以降、可及的速やかに完全な脱炭素化を実現するための重要な一歩 となる。②この合意案は、11月のMEPCで承認されれば、2023年から発効する。③合意案では、船舶のエネルギー効率をAからEまでに分類することによって、船主が船舶のエネルギー効率を改善することを動機づけ、エネルギー効率の良いA/Bランクの船舶は高い用船料を稼ぐ一方で、基準を満たさないD/Eランクの船舶は用船契約上不利な立場に置かれる。④今回の合意によって、世界の海運の規制当局としてのIMOがパリ協定の目的に沿って船舶からのCO₂排出量を削減するための法的拘束力を持った目標を達成できる能力を持つことが改めて確認された。⑤海運は国際的な産業である以上国際的な規制に従うべきで、国際的な規制以外のいかなる代替的な規制も、地域的/各国の規制と整合性の取れない混乱をもたらし、国際的な規制枠組みの下で、海運のCO₂排出量を削減するための今後の交渉に悪影響を及ぼす。
      • 原文 October 23, 2020, ICS(長谷部正道)
    • 【5】米軍:パラオでの軍事プレゼンスを強化へ
      • 【5】過去2ヶ月の間に米国防長官と米海軍長官の両名がパラオを訪問し、パラオ大統領も両名に対して自国に基地、港湾、滑走路などの建設を要請する書簡を送付した。米国とパラオが1994年に締結した自由連合盟約(The Compact of Free Association)の下では、米国はパラオを防衛する義務を負い同国に防衛施設を建設する権利を有しているが、パラオ大統領は書簡の中で、これまでこの枠組みが十分に活用されていないとし、米軍が定期的にパラオに駐留するために自由連合盟約のメカニズムを活用するべきであると訴えた。米海軍長官もパラオ大統領との会談において、パラオは米軍が周辺地域に展開するうえで非常に重要な場所にあるとしてその戦略的な重要性を強調した。米海軍長官のパラオ訪問の直前には、日本を基地とする米海軍の揚陸艦が1週間にわたりパラオに寄港し、10月12日には24名の米空軍職員が滑走路の調査のために同国の複数の島を訪れている。また、米国沿岸警備隊の設標船も今年5月の入港に続き設標作業のためにパラオに入港している。米海軍は露や中国の情報戦略に対抗して艦船の動きの予測を困難とさせる分散海上作戦(Distributed Maritime Operations)の思想を進めており、特に中国の長距離兵器の脅威に晒されるフィリピン海や南シナ海においては、拠点となる新たな施設を手に入れることは重要な意味を持つ。
      • 原文 October 23, 2020, Breaking Defense(若林健一)
    • 【6】将来の環境性能に優れた舶用代替燃料の間の競争
      • 【6】Bloombergによる標記特集は、①舶用代替燃料(アンモニア・水素・LNG・バイオ燃料・メタノール・原子力)の長所と短所を分析し、②どうして代替燃料へ転換しなければならないのか③上記代替燃料の開発のため、現在進行中の注目すべき試験事業・実証計画および④代替燃料以外の船舶からのCO₂削減措置を紹介し、⑤電力、風力・太陽光などの再生可能エネルギーを用いた手段の実用可能性を説明し、⑥開発費用および資金調達方法についてわかりやすく解説している。項目ごとの具体的な内容については下記リンクを参照。
      • 原文 October 23, 2020, The Washington Post(植木エミリ)
    • 【7】現在の政府の対策では感染拡大を防げないと考える医師が多数
      • 【7】今月英国政府はコロナウィルス感染拡大を防止するためにイングランドを対象に新たに3段階の警戒レベルとそれに応じた制限措置を導入したが、英国医師会の調査によると、今回の政府の対策が十分に機能すると考えている医師はわずか5.95%にとどまり、多くの医師が全く効果を得られない又はわずかな効果しか得られないと考えていることが分かった。また、半数以上の医療従事者が秋から冬にかけて感染拡大により職員の数が不足することや自身の健康に関する懸念を抱いていることが判明した。さらに、コロナウィルスの感染者以外の患者への治療が困難となることを懸念している医療従事者は約6割に達している。

        ※10/25の英国の感染者数:19,790人(日本731人の27倍、緊急事態解除基準47人の421倍)
        ※10/25の英国の死者数:151人(日本5人の30倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 October 25, 2020, Evening Standard (若林健一)
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