2020/10/26LROニュース(7)

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  • 2020.10.26 UP
    2020/10/26LROニュース(7)
    • 【1】BIMCO: 乾季のギニア湾では海賊事件が増加するので対策強化が必要
      • 【1】ギニア湾では乾季が近づき海象も平穏となるこの時期は例年海賊事件が増加する傾向にあることから、同海域を航行する船舶に対する保安上のリスクについて改めて見直す必要があり、船長や乗組員は警戒を強化し、あらゆる対策を講じることが求められる。船舶保安統括者や船長は、海賊による襲撃は港や荷役施設でも発生することを認識し、乗組員は必要な場合を除き船を離れることは避け、舷門当直に対しては不審事象に対して目を光らすよう指導を徹底するべきである。すべての船舶の安全を確保して世界貿易を保護するためには、以下の対策などを講じる必要がある。①旗国が定める要件やガイダンスに従うこと。②西アフリカにおけるベストプラクティス集(BMP West Africa)が推奨する対策を採用し、襲撃を受けた場合の対処に完熟しておくこと。③シタデルに衛星電話を設置すること。④西アフリカ沖を航行する場合にはMDAT-GoGに登録して日報を報告すること。⑤襲撃され又は襲撃を受ける懸念がある場合には直ちにMDAT-GoGに連絡すること。⑥船舶間の貨物油積替え(STS)などを行う場合、沿岸から十分な距離を保って待機し、会合地点までは速度を上げて移動し時間通りに到着すること。
      • 原文 October 21, 2020, BIMCO(若林健一)
    • 【2】VLSFOの原料としてディーゼル油の割合が増え、スラッジ発生リスクも増加
      • 【2】コロナ経済不況で余剰となった中間留出油であるディーゼル油やジェット燃料として使用されるケロシンの処分方法として、舶用低硫黄分燃料(VLSFO)の原料として使用される量が増加し、これらの中間留出油が多くブレンドされたVLSFOの粘性が落ち、燃料の安定性に影響を及ぼす恐れがあると燃料油の試験にあたる関係者が懸念している。実際の事故例は数件しか報告されていないが、この結果スラッジが発生して、最悪の場合、機関が損傷する恐れがある。こうした不安定なVLSFOを特定するのは簡単ではなく、舶用ガスオイルが1年間保管可能なのに比べて、VLSFOは供給を受けてから3か月以内に使い切る必要がある。ロイズ船級協会の燃料油分析の専門家によれば、VLSFOの粘性は燃料油の供給地にもよるが、2020年1月から8月の実績では、52から179centistorokeとばらつきが多いが、100以下となると燃料の安定性が懸念されるという。フジャイラ港で供給されるVLSFOの粘度は100を上回るが、シンガポールで供給されるVLSFOの粘度は100を切ることが多いとしており、IntertankoによればIMO2020規制に伴うVLSFOの品質問題で、海運会社は既に10億ドル(約1050億円)以上の損失を出している。
      • 原文 October 21, 2020, gCaptain(長谷部正道)
    • 【3】ラゴス西方海域を運航中の化学タンカーから船舶警報通報が発報
      • 【3】10月22日午前7時58分、ナイジェリアのラゴスの南方107海里の海上を航行していたケミカルタンカーが船舶警報通報を発信した。同船は海賊による襲撃を受けたと見られるが、乗組員は全員シタデルに避難して無事である。本件に関する詳細は明らかでないが、同船は10月20日午後2時20分にカメルーンのリンベ錨地を抜錨して南西に向け航行していたと見られ、同日午後3時ころに船舶自動識別装置(AIS)の信号の発信を停止している。本件は今年に入りナイジェリアの排他的経済水域内で発生した19件目の事例で、同海域での事件発生数にあっては減少傾向にあるが、依然として海賊による襲撃のリスクは高いことから、航行する船舶は厳重な警戒態勢をとる必要がある。
      • 原文 October 22, 2020, Dryad Global(若林健一)
    • 【4】米国で洋上風力発電の開発を進める必要性
      • 【4】(論説)現在、米国が有する洋上風力発電所は一か所のみで、発電量は30MWにすぎず、105か所の集合型洋上風力発電施設が稼働中で、18.5GWの発電能力を有す欧州に比べ大きく後れを取っている。10月20日に米下院に提出された法案には、米国の洋上風力発電能力を2025年までに12.5GW、2030年までに25GWまで拡大する目標が掲げられており、この目標は、現在の米国の発電量に鑑みると非常に野心的に思えるが、米エネルギー省の試算では、米国の洋上風力発電は、将来的に現在の総電力使用量の2倍にあたる2000GW以上を発電する可能性を秘めている。英国では最近、2030年までに洋上風力発電量を現在の実績の4倍にあたる40GW引き上げる計画を発表したが、上記法案の目標を米国で達成するためには、発電能力を10年間で800倍以上にする必要があり実現可能性が低いが、化石燃料への依存から可及的速やかに脱するためには、洋上風力発電が大きな役割を担うことができるとする科学者の意見に政策決定者は耳を傾ける必要がある。
      • 原文 October 21, 2020, Earther(植木エミリ)
    • 【5】気温上昇による冷房使用の増加がさらに気候温暖化を促進する悪循環
      • 【5】世界の気温上昇により、厳しい熱波の発生件数が増え、世界中で多くの人々が酷暑による健康被害にさらされる中で、冷房や冷蔵機能は人々の福祉や健康、社会の機能維持、正常な工業生産の維持や食品・薬品の保存に不可欠なものである。この結果、冷房・冷蔵に必要なエネルギー需要がこれまでになく急増しており、これに伴うGHG排出量の増加が気候変動リスクとなっているため、持続可能な冷房の在り方について考える必要性がある。国際エネルギー機関(IEA)の「冷房の将来見通し」報告書によると、2018年は世界中で16億台のエアコンが稼働し、エアコンや扇風機の運転に、世界の総電力使用量の2割が使用されたが、IEAはエアコンの稼働に必要な電力の需要が2050年までに現在の3倍になると予測している。この追加需要分だけで、米・EU・日3か国の総発電量に匹敵する電力が必要であり、このままでは冷房需要の増加によって消費電力とGHG排出量の増加を招き、それによって温暖化が更に進行し、冷房需要がますます増加するという悪循環に陥る危険性があるため、持続可能な冷房について検討する必要がある。
      • 原文 October 21, 2020, 世界経済フォーラム(植木エミリ)
    • 【6】Transport & Environment: IMO ISWG GHGの合意結果を強く批判
      • 【6】Transport & Environment等の環境NGOは、IMOのGHG削減中間作業部会の合意内容を強く批判しているところその概要は以下のとおり。①合意案にはcarbon intensity(輸送単位当たりのCO₂排出量)に関する削減目標が含まれていない。②多くの船種について、現存船燃費性能規制(EEXI)の厳格な適用が緩和された。③合意案は、何もしない場合と比べて、船舶から排出されるCO₂の量を、2030年までの最大でも0.65%から1.3%しか削減しない。④EEXIの基準に満たない船舶でも3年間そのまま運航可能で、3年毎に改善案を提出すれば、ずっと規制値を達成しないこともできるという抜け道がある。⑤規制を遵守しない場合の制裁措置に関する規定がすべて削除された。⑥この結果、㋐船舶から排出されるCO₂の総量を速やかにピークアウトさせ、㋑2023年を待たずにCO₂の排出量を削減開始し、㋒パリ協定の目標実現のために、船舶からのCO₂削減の道筋を付けるというIMOによる当面のGHG戦略の目標の達成にすべて失敗した。
      • 原文 October 23, 2020, Transport & Environment(長谷部正道)
    • 【7】英国政府がコロナウィルスの検査・追跡システムの失敗を認める
      • 【7】英国政府はコロナウィルスの感染拡大を防止するため、感染が疑われる症状の発症者が直ちに検査を受け、検査結果が陽性であった場合には発症前後の時期の接触者に14日間の隔離を指示する検査・追跡システム(Test and Trace)を今年5月から約120億ポンド(1兆6千億円)を投じて運用してきた。同システムを有効に機能させるには、少なくとも接触者の8割以上と連絡をとり隔離を指示する必要があるとされているが、その達成率は運用開始以降減少を続け、10月14日までの1週間では6割を下回り最低を更新した。また、政府は検査を受けてから24時間以内に結果を通知することを目標にしているが、これも倍の48時間を要している。ジョンソン首相や政府の首席科学顧問は10月22日の記者会で、同システムが有効に機能しておらず改善が必要であることを認めた。

        ※10/22の英国の感染者数:21,242人(日本621人の34倍、緊急事態解除基準47人の452倍)
        ※10/22の英国の死者数:189人(日本6人の32倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 October 22, 2020, The Guardian (若林健一)
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