2020/10/22LROニュース(8)

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  • 2020.10.22 UP
    2020/10/22LROニュース(8)
    • 【1】 IRENA: 2030年までに洋上風力が228GWその他の海洋再生エネが10GWに
      • 国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、2030年までに世界の洋上発電能力は228GW、波力・潮力・海洋温度差・洋上太陽光を合わせた海洋再生可能エネルギーの発電能力は10GWに成長することが見込まれている。2020年6月25日に設立されたIRENAの海洋/洋上再生可能エネルギー連携枠組(Collaborative Framework on Ocean Energy/Offshore Renewables)では、連携可能な分野について議論され、今後は加盟国ばかりでなく、関係業界団体にも会合への参加を求めるとしたが、このほど、40ヵ国の代表と世界風力会議(GWEC)・欧州海洋エネルギー(OEE)の代表が参加して、第2回会合が開催された。現在、世界の洋上風力発電所の9割は北海と大西洋周辺地域で運用されており、GWECのCEOは、欧州における洋上風力の迅速な展開は、洋上風力発電施設間の接続に関する地域的な連携や海洋空間計画(MSP)等の成果であり、本連携枠組が北海同様の連携を他の海域にも広めることを促進できるのではないかと語った。またOEEのCEOは、洋上風力発電以外の海洋再生可能エネルギーの開発により、世界中で120万人以上の雇用創出が可能であると共に、洋上風力や太陽光発電は天候の影響を受けやすく発電量が安定しないが、波力・潮力等の海洋再生可能エネルギーは天候の影響を受けず、洋上風力や太陽光発電の短所を補うことができると強調した。
      • 原文 October 18, 2020, IRENA(植木エミリ)
    • 【2】 ABS: 将来の船舶燃料に関するアンケート調査結果と脱炭素化の道筋
      • 米国船主協会(ABS)が、将来の燃料に関するアンケート調査を実施したところ、2050年における新燃料としては、LNG(47%)・水素(40%)・アンモニア(8%)・メタノール(5%)がそれぞれ支持をあつめ、2030年における新燃料としては、LNG(64%)・水素(22%)・アンモニアとメタノール(7%)という結果となった。ABSはIMOのCO₂削減目標を達成するための将来の新燃料への移行の道筋として以下の選択肢を提示している。第一は、「軽量ガス」の道筋で、まずはLNG(GHG削減率約20%)を利用し、バイオガス・電力から製造されたメタン(炭素中立)に移行し、最終的には水素(ゼロ炭素)に至る道筋。第二は、「重量ガス」の道筋で、まずはLPG・メタノール・エタノール(GHG削減率約10%)を利用し、バイオ・合成LPG/メタノール(炭素中立)に移行し、最終的にはアンモニア(ゼロ炭素)に至る道筋。第三は、バイオ・合成ディーゼルから始まり、電力・合成ガス液化油(GTL)を経て、第2・第3世代のバイオ燃料に至る道筋で、どの道筋が船主にとってふさわしいかは、各船舶の運航形態や運送する貨物によって異なってくる。
      • 原文 October 16, 2020, Offshore Energy Biz(長谷部正道)
    • 【3】 注目を集めるIMO/GHG削減中間作業部会の議論
      • IMOのGHG削減中間作業部会は、10月19日からオンラインで開催されているが、IMOで合意されたCO₂削減目標を実現するための短期的な拘束力のある対策について検討が行われている。前回の作業部会以降、日本が中心となって「技術的な手法によるgoal-basedな削減方法」について、関心国やICS/BIMCOなどの業界団体が非公式協議を実施して妥協した「既存船の燃費性能の算定による規制(EEXI)」に基づく提案が多くの支持を集める見込みだが、International Council on Clean Transportation (ICCT)の試算によれば、この妥協案では、今後10年間にわずかに0.8%から1.6%のCO₂削減効果しかないことから、船舶の運航速度を削減するような運航面でのgoal-basedな手法の方が、有効であるとなお反対する意見もある。EUはIMOの場で世界的なCO₂削減策についての議論が進展しなければ、海運をEUの排出権取引制度の対象にすることを計画している一方、IMOに集まったEU各国の代表は2029年までに新たな基準に適合しない船舶をスクラップにするという新たな案について検討を行っているとも報じられている。今回の作業部会で合意された案は、11月のMEPCで承認され、2021年のMEPCで条約改正案が採択される段取りとなっている。
      • 原文 October 20, 2020, Ship & Bunker(長谷部正道)
    • 【4】 船員としてのキャリアの魅力の減少と共に船舶職員の確保が困難に
      • Drewry社によれば、船員の職業としての魅力を維持するために、休暇を増やし乗船日数を減らすといった待遇改善を実施しても、船員の職業としての魅力は減少を続け、船員の需給バランスが厳しくなり、船員コストも上昇している。同社は甲板と機関の船舶職員の職階ごとに、採用の難易度に関するアンケート調査を実施した結果、甲板部より機関部の職員が、下位の職員より上位の職員の方が採用が困難であることが分かった。特に、一等機関士・電子技術職員(ETO)・(ガス)貨物技師・Dynamic Positioning運航士(DPO)等の職種の採用が困難であるという回答結果が出た。
      • 原文 October 20, 2020, Offshore Energy Biz(長谷部正道)
    • 【5】 EUの炭素国境調整制度に関するパブコメについて
      • EUは現在標記パブコメを実施中だが、炭素国境調整制度(CBAM)は、欧州Green Dealの一環として検討されている措置である。EUとして2050年までの炭素中立を目指すにあたり、今後増々排出権取引制度(EU ETS)の運用は強化され、排出権の価格が上昇することによって、エネルギー多消費型の製造業がEU域外に生産拠点を移転(Carbon Leakage : CL)し、排出規制の緩い国から安い製品がEU域内に輸出されることによって、EU域内の企業が競争上不利な立場になることを防ぐため、EU域内に製品が輸入される際に、当該製品が製造および輸送される過程において排出されたCO₂排出量に応じて調整関税をかけることを目的とするものである。具体的な制度設計として、①CBAMは全ての製品を対象とするか、或いはCLが発生するリスクが高いエネルギー多消費型の製品に限定すべきか?②調整の方法として、CBAMは製品がEU内へ入る時に税金として課すか、EU ETSに組み込むか?③輸入品にかかる炭素排出量をどのように計算・検証するか?等といった問題について欧州委員会が検討を行っている。意見の提出期限は10月28日となっている。
      • 原文 October 15, 2020, Herzog Fox & Neeman(植木エミリ)
    • 【6】 西オーストラリアで船員の入国規制を強化
      • 西オーストラリア州では、マニラから到着した2隻の船舶から既にコロナに感染した船員が確認され、地元は対応に追われたが、さらにフリーマントル港に到着した家畜運搬船とばら積み船からも新たにコロナに感染した船員が確認され隔離された。このようにわずかに1か月のうちに4件の船員の感染事例が発生したのを受けて、同州の産業界・地域自治体・政治家から船員の交代に関する規制を強化し、或いは外航船舶の入港拒否や港湾の閉鎖まで求める声が強まった結果、同州政府は船員交代に関する規制を強化した。具体的には、①船員交代に伴う船員の下船は、同州内では原則としてパース港のみで認められる。②やむを得ず他の港湾で下船した船員は8時間以内にチャーター機でパースに移動しなくてはならない。③パースに到着後は、自費でパース市内のホテルで14日間隔離されなくてはならない。④パースから国際航空便で帰国する船員については、下船する前に航空便を予約する必要があり、船舶から空港に直ちに移動するか、認可された検疫区域で搭乗を待たなければならない。さらに、同州の首相は議会において、マニラのようにコロナに感染した船員を乗船させた実績を持つ港湾からの船舶の入港を拒否することも検討していると表明した。
      • 原文 October 20, 2020, The Maritime Executive(長谷部正道)
    • 【7】 北極海の海運に関する第4回Best Practice情報交換フォーラムが開催
      • 表記会合が、北極評議会の北極海海事環境保護(PAME)WGの議長主催で、11月24日と25日オンラインで開催される。同フォーラムは北極理事会加盟国・オブザーバー国・先住民代表等に開放されているが、IMOの会議に出席する資格を持っている国・団体も登録が可能となっている。フォーラムの詳細は以下のリンク参照。(IMO Circular Letter No 4208/Rev.1)
      • 原文
    • 【8】 北部マンチェスターの集中治療用の病床が4週間以内に満杯に
      • 10月20日英国政府は、コロナウィルス感染者の増加が著しいイングランド北部のグレーター・マンチェスターの警戒レベルを地元の反対を押し切るかたちで10月23日から最も厳しい「Very High」に引き上げることを発表した。これにより、異なる世帯間の交流がより厳しく制限され、食事を提供しないパブやバーなどの営業も禁止となり、他地域との往来の自粛も求められる。政府は今回の決定に先立ち、同地域では60歳以上の感染者数がわずか15日間で3倍に増え、入院患者数も9日毎に倍増しており、現状が続いた場合には同地域内の集中治療用の病床は11月12日までに満杯となるとして警告を発していた。また、政府は10月21日、同じくイングランド北部のサウス・ヨークシャーの4都市についても10月24日から警戒レベルを「Very High」に引き上げることを決定した。

        ※10/20の英国の感染者数:21,331人(日本318人の67倍、緊急事態解除基準47人の453倍)
        ※10/20の英国の死者数:241人(日本2人の121倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 October 19, 2020, Evening Standard (若林健一)
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