2020/10/21LROニュース(7)

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  • 2020.10.21 UP
    2020/10/21LROニュース(7)
    • 【1】2-3℃の北極圏の気温上昇で永久凍土から膨大なGHGが排出される恐れ
      • 【1】ストックホルム大学等の研究者が10月16日Science Advance誌に発表した研究によると、研究者達が2.7万年の間北極海の海底に堆積した泥の化学的・有機的な組成を分析したところ、最終氷期の末期に北極圏の気温が1℃上昇したことによって、永久凍土の大規模な解凍が発生し、泥となって北極海に流れ込む過程で大量のCO₂とメタンを大気中に放出していたことが明らかになった。北半球の永久凍土の面積は約2330万㎢で、米国・中国・カナダの面積を合計した面積とほぼ同等であるが、これらの土壌は地球の全大気中よりも多くのGHGを内包しているため、過去の事例の分析から、北極圏でわずか2-3℃気温が上昇するだけで大規模な永久凍土の解凍が引き起こされ、大量のGHGの放出が空気中に放出されると、地球温暖化が更に加速することが明らかになった。
      • 原文 October 16, 2020, Inside Climate News(植木エミリ)
    • 【2】独:脱石炭・原子力と再生可能エネルギーへの転換
      • 【2】2011年に発生した福島原発事故を踏まえ、独メルケル首相は国内の全ての原子力発電所を2022年までに廃止することを決定した。一方で、同政権は気候変動対策の観点から2038年までに全ての石炭火力発電所を廃止するとし、石炭生産を含む石炭関連産業全体で400億ユーロ(約5兆円)を石炭に依存する地域への転換対策費として支出することを約束しているが、原子力発電については、原子力発電所の立地地域に対する同様の救済は予定されておらず、地域住民は雇用の確保など将来への不安を強めている。計画では、原子力および石炭火力発電の廃止後は、再生可能エネルギーによりその電力を補填する予定で、2019年には全発電量に占める再生可能エネルギーのシェアが46%に到達し、初めて化石燃料全体のシェアを上回った。しかし、新たに導入された風力発電所の立地可能場所を制限する規則が風力発電の拡大にブレーキをかけ、エネルギー転換計画全体が円滑に実施されるか危ぶむ声も挙がっている。
      • 原文 October 19, 2020, Euro News(植木エミリ)
    • 【3】中国はどうすれば2060年まで炭素中立目標を達成できるか?
      • 【3】世界最大のCO₂排出国である中国は、9月の国連総会で2060年までの炭素中立化を宣言したが、Nature誌は影響力のある研究機関から、中国がどうしたらこの目標を達成できるか聞き取った。その結果、中国が目標を達成するには第一に電力の脱炭素化を図り、第二に自動車を電気自動車に転換するなど、可能な限りエネルギーの電化を推進する。第三に、どうしても化石燃料あるいはバイオマスに頼らざるを得ない部分については、排出されるCO₂を回収・貯留する(CCS)技術を開発することが肝要であることで概ね意見が一致した。このためには、2060年までに中国国内の発電能力を現在の2倍以上である15034テラワットまで拡大する必要があり、具体的には、風力発電を9倍、太陽光発電を16倍に拡充するだけでなく、石炭火力発電を削減するため、水力発電を2倍、原子力発電を6倍に拡充する必要がある。以上の措置をとっても、化石燃料による発電シェアは依然として16%程度残るため、CCSと組み合わせるか、大気中から直接CO₂を回収する技術開発や植林の推進が必要となる。
      • 原文 October 19, 2020, Nature(植木エミリ)
    • 【4】EU: Our Ocean Conferenceに提出されるEUの約束リスト
      • 【4】12月7日から8日に、パラオで開催される今年のOur Ocean Conferenceに提出されるEUの約束リストは、気候変動(3項目)・海洋環境汚染(4項目)・持続可能な海洋経済(12項目)・海洋保護区(2項目)・持続可能な漁業(3項目)・海上保安(7項目)から構成されている。具体的なリストは以下のリンクを参照。
      • 原文 October 15, 2020, 欧州理事会(長谷部正道)
    • 【5】USCG: 砕氷巡視船の整備が米国の国益を守るために不可欠
      • 【5】露は40隻以上と世界最多の砕氷船を有し現在も3隻を建造中のほか、今後10年間でさらに12隻を建造する計画であり、中国も複数隻の砕氷船を建造中で北極海のインフラ整備にも力を入れている。これに対して米国は、米国沿岸警備隊(USCG)が現有するPolar StarとHealyの2隻の砕氷型巡視船でそれぞれ北極及び南極での業務に対応してきたが、最近Healyの船内で火災が発生したことから現在稼働できる砕氷船はPolar Star1隻のみのである。USCGも新たに6隻の砕氷船の建造計画を策定し、1隻目の建造は既に予算化されているものの2024年までに海上試運転を行う計画であり、少なくとも2023年まではPolar Starを通常船の寿命とされる船齢を20年以上も超えて使い続ける必要がある。露はソ連時代に使用していた50以上の基地を再整備し、アラスカ付近に早期警戒システムを設置している。また、今年夏には露海軍が冷戦終結以降最大の海上演習をアラスカ付近で実施した。中国も南極での基地建設を進め、2隻目の砕氷船を完成させ、6回の北極海遠征を実施するなど、極地域における能力を強化している。北極海において増大する露や中国の脅威に対抗し米国の国益を守るためには、砕氷型巡視船の整備が不可欠である。
      • 原文 October 19, 2020, Defense News(若林健一)
    • 【6】アラスカの氷河の融解により大規模な津波が発生する可能性
      • 【6】5月14日、複数の気候変動・地滑り・津波を専門とする科学者たちが連名で、アラスカ州政府の天然資源省に対し、氷河の融解に伴って不安定になった岩石の崩落によって、1年以内に地滑りが発生し、海に流れ込んで大規模な津波を発生する恐れが逼迫しているとする緊急警告書を提出した。アラスカでは、1958年にもLituya湾で、地滑りによる大津波が発生しているが、衛星写真を分析するとバリー氷河が温暖化のために縮小し、氷河の下にあった大きな岩石が山肌に露出し、既に緩やかな斜面の崩壊が発生している可能性があるが、地滑りを起こす土砂の量と斜面の角度を分析すると、1958年の地滑りの際の16倍の土砂が、11倍以上のエネルギーを発生して崩れる可能性があり、最大で524mの史上最大の津波を発生させる可能性があるとしている。大量かつ長期間の降雨や地震、永久凍土・積雪・氷河の融解などが、大規模な地滑りの引き金となる可能性がある。
      • 原文 October 19, 2020, Science Alert(長谷部正道)
    • 【7】ヒースロー空港で出国者向けのLAMP法検査のサービスが開始
      • 【7】英国内でコロナウィルスの感染者数が再び増加する状況を踏まえ、英国からの入国者に対してコロナウィルスの陰性の検査結果の提示を求めるなど規制を強化する国が増加している。例えば、英国から香港に入国する場合は出発前の72時間以内に取得した陰性の検査結果を提示する必要がある。また、イタリアでも入国時に陰性の検査結果を提示するかその場で検査を受ける必要がある。このような状況を踏まえ、英国最大の空港であるヒースロー空港では1時間程度で結果が判明するLAMP法検査を1回当たり80ポンド(約1万1千円)で受けることができるサービスが10月20日から開始された。一方で、施設での分析が行われるPCR検査と比較してLAMP法検査は精度が劣るとされ、ギリシャやキプロスなどLAMP法検査による証明を認めていない国も多い。また、今回のサービスはあくまで出国者向けであり、感染リスクが高いとされる国からの入国者には引き続き2週間の隔離措置が適用される。

        ※10/19の英国の感染者数:18,804人(日本465人の40倍、緊急事態解除基準47人の400倍)
        ※10/19の英国の死者数:80人(日本4人の20倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 October 20, 2020, BBC (若林健一)
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