2020/10/20LROニュース(7)

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  • 2020.10.20 UP
    2020/10/20LROニュース(7)
    • 【1】北極海で高まる大規模海難事故の可能性
      • 【1】2018年の末に、一日中、太陽光がない極夜の中で、ノルウェーのスヴァールバル諸島でエビ漁のトロール漁船が座礁した。嵐の中で、機関室が浸水し、ノルウェー政府の沿岸警備隊のヘリが乗組員を救出したものの、燃料タンクの30万トンのディーゼル油は船体と共に放置され、セイウチ・北極熊・多種類の海鳥の宝庫であるNordaust-Svalbard自然保護区は油濁汚染の危険性にさらされた。これまでは、同海域での大型トロール船の活動は困難であったが、気候変動のため、北極海の気温が上がり、海氷が減少したため、漁船・研究調査船・観光クルーズ船・貨物船・天然資源開発関係の船舶などの活動が可能となり、グリーンランド沖を含む北極海全域で、2013年から2019年の間に、運航船舶数で25%、航海距離ベースで75%船舶交通量が増加した。船舶の種類別にみると、漁船の割合が最大だが、その他の船舶の交通量も着実に増加している。しかし、気象海象条件や流氷の状況など予測は依然として難しいうえに、気候変動によって風や波はむしろ強くなる傾向にあり、油濁事故など大規模海難事故発生の可能性が高まっているが、北極海という遠隔性から、通常の海域における事故に比べて、救難・油濁汚染の対応が困難であると北極評議会の緊急事態WGの議長は語っている。
      • 原文 October 13, 2020, Hakai Magazine(長谷部正道)
    • 【2】比運輸省:比人船員のコロナ感染について調査を開始
      • 【2】比で船員交代を実施した豪向けばら積み貨物船で相次いで比人船員のコロナ感染が確認され、豪で比における船員交代の禁止が検討されているのを受けて、10月16日、比運輸省は、世界の商船の船員の1/4を供給する同国の船員の乗船禁止措置を回避するため、2件の事例について調査を実施し、必要に応じて比における船員交代の手続きの強化を図ることを発表した。比では、9月にマニラ港で船員交代のための新たな施設を開設して、比政府が定める方法で感染検査などを実施しているが、比運輸省の政務官は、今回問題になった事例は、この新たな施設・手順が適用される前で、船員手配会社が独自に検査等を実施したのではないかと語った。10月12日付の、豪の現地紙は、同国の鉱山会社は比におけるパンデミックの中心地であるマニラにおける船員の交代を認めないと決定したと報じているが、比海事庁は正式な通告はまだ受けていないとコメントしている。
      • 原文 October 16, 2020, Yahoo(長谷部正道)
    • 【3】WMO: State of Climate Services 2020報告書を発表
      • 【3】過去50年間に、世界中で約1.1万件の自然災害が発生して200万人以上が死亡し、3.6兆ドル(約380兆円)以上の経済的損失が生じている。世界気象機関(WMO)は10月13日に発表した標記報告書の中で、効果的な災害リスクの削減と気候変動への適応に必要な早期警報制度の有効活用を求めると共に、不十分な普及率などの問題点を指摘し、以下のとおり勧告を行った。①アフリカの後期開発途上国と小島嶼開発途上国(SIDS)において、早期警報制度の整備を進める。②異常気象の警報だけでなく、当該異常気象によって受ける被害を想定し、迅速な避難行動につながるような投資を進める。③適切な早期警戒情報を出すため、世界的な観測網を整備・維持するための持続可能な予算措置を確立する。④早期警報制度の実施のために、予算配分がどのように行われ、実際にどのような効果があったかを検証する。⑤早期警報制度の効果を検証するための監督・評価方法の整合性の改善を図る。⑥SIDSなどまだ十分に観測・情報収集体制が整備されていない地域の体制の整備を図る。
      • 原文 October 13, 2020, 国連(植木エミリ)
    • 【4】Sea Cargo Charterに対する考察(The Baltic Exchange)
      • 【4】The Baltic Exchangeが10月17日、標記考察を発表したところ概要は以下のとおり。①顧客等から荷主としての気候変動対策に関する貢献を求める声が強まる中、一向にはかどらないIMOにおける検討作業にいら立って、大手荷主が船舶からのCO₂削減について自主的な行動をとるため、Global Maritime Forumのリーダーシップの下、海上貨物憲章(Sea Cargo Charter: SCC)と関連する用船契約上の条項を採択した。②SCCは海運会社がCO₂排出削減目標に従って、船舶から排出するCO₂の量を実際に削減しているか数量的に評価し公表するもの。③ICSやBIMCOなどの海運業界団体は、既に不快感を示し、IMOにおける適正な手続きを経ずに、CO₂の排出量の報告制度を設けても効果的でないと批判している。④SCCは将来的にはIMOの政策や規制との整合性を図るとしつつ、Poseidon Principlesなどの民間主導の海運の気候変動対策も支持するとしている。⑤国連事務次長のAmina Mohammedは、SCCが提唱する透明性の高い船舶からのCO₂排出量報告制度を歓迎しつつも、国家間の政策との整合性も図る必要があると釘を刺している。
      • 原文 October 14, 2020, Baltic Exchange(長谷部正道)
    • 【5】マラボ(赤道ギニア)沖の錨泊地のLNGタンカーから船員1名が誘拐
      • 【5】10月17日午前5時30分ころ、赤道ギニアのマラボ沖合に錨泊していたLNGタンカーに賊が侵入した。ただちに警報が発動し船員はシタデルに避難したが、2名のフィリピン人船員が賊の人質となった。このうち1名は賊のボートから海に飛び込み逃走に成功したが負傷した。また、シタデルに逃走した船員のうち1名も負傷したことが確認されている。事件発生後に赤道ギニア海軍が現場に到着し調査を実施したが、賊はフィリピン人船員1名を誘拐し現場から逃走しており、逃走ルートについては現在も判明していない。本件は今年に入りギニア湾で発生した20件目の誘拐事件で、今年前半には昨年同期より多くの船員が誘拐されているが、現在の傾向としては昨年同期と比較して少ない数で推移している。しかし、9月から12月にかけては海上模様が平穏になるため、誘拐事件は増加する傾向にある。
      • 原文 October 17, 2020, Dryad Global(若林健一)
    • 【6】比大統領:南シナ海における石油ガス開発禁止措置を解除
      • 【6】10月15日に比大統領は、南シナ海を巡る中国との緊張の高まりを受けて2014年に一時停止を決定した石油ガス開発事業の再開を許可した。翌16日に比エネルギー相は記者会見を行い、ルソン地域北部の電力需要の40%を賄っているMalampayaガス田は近い将来使い果たされる見込みであり開発事業の再開は不可欠であると述べたうえ、今回の決定は比独自の判断であるが、中国との南シナ海における石油ガス共同開発に関する覚書などには影響は与えず、中国の理解も得られるとの考えを示した。今回の決定により、石油ガス資源の埋蔵量が豊富とされるリード礁を含め、3件の資源探査プロジェクトが再開するとみられる。比政府は、比・中両国の企業が参加したリード礁を含む南シナ海での共同開発事業の可能性について近年中国との交渉を続けているが、合意には至っていない。しかし、比エネルギー相は、今回の判断は比・中両者の交渉に十分配慮し誠意をもって決定されたものであると述べ、比外務省報道官も、比・中がともに妥協点を見つけ共同開発を前進させ、前向きな進展を続けることを望んでいると述べた。
      • 原文 October 16, 2020, South China Morning Post(若林健一)
    • 【7】ウェールズ:11月9日まで全地域を対象にロックダウンを実施へ
      • 【7】ウェールズ首席大臣は10月19日の記者会見で、急増するコロナウィルスの感染者を抑え込むために10月23日午後6時から11月9日までの間全地域を対象にロックダウンを実施すると発表した。ウェールズの多くの地域では既に地域的なロックダウンを実施し、3段階の警戒レベルのうち2段目(High)以上に指定されている英国内の他の地域からの人の移動も禁止しているが、医療サービスの崩壊を防ぐためにもさらなる規制強化が必要と判断した。これにより、医療従事者など一部の労働者を除き人々の外出は制限され、必要不可欠な業種以外の店舗は閉店し、飲食業もテイクアウェイのみ営業が許される。また、図書館や集会所などの公共施設や、教会も葬式や結婚式を除き閉鎖となる。さらに、同居人以外の他人と集まることも屋内外を問わず原則禁止となる。学校も閉鎖となるが、小学校など一部は対象期間を半分経過した時点で再開される見通しとなっている。

        ※10/18の英国の感染者数:16,982人(日本591人の29倍、緊急事態解除基準47人の361倍)
        ※10/18の英国の死者数:67人(日本9人の7.4倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 October 19, 2020, The Guardian (若林健一)
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