2020/09/17LROニュース(7)

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  • 2020.09.17 UP
    2020/09/17LROニュース(7)
    • 【1】わかしお号事件:業界出身のIMO専門家等の対応に多くの問題
      • 【1】わかしお号事件を詳細にフォローしているForbesはIMOが現地に送り込んでいる専門家(油濁関連業界団体の国際油濁管理機関(ISCO)の事務局員)の行動の問題点を複数指摘しているところその概要は以下のとおり。①IMOはモーリシャス政府とOPRC 90に従って協定を締結し、IMOの権限は油濁対応と被害緩和に関する助言に限定されているにもかかわらず、わかしお号のサルベージ(船首部分の海洋投棄)の問題に、IMOの専門家が本部の承諾を得ずに深く関与した。②油濁事故発生後通常すぐに実施される流出油の成分鑑定(GC-MS)をIMOが実施していないか、その結果を今回の油濁処理作業にあたっている関係者に開示していないので、作業関係者に多くのリスクを負わせており、IMOの不作為は過失(negligence)を問われても仕方がない。③IMOの専門家は、世界的に有名な生物多様性の専門家である同国の前大統領を含む、同国内の人材を無視して、割高な外国人専門家を重用するばかりでなく、世界各国から寄せられている様々な支援の申し込みを過剰だとして、IMOの名のもとに国際支援の選択を勝手に実施している。④地元の女性は除染作業の前線で活躍しているにもかかわらず、またIMOは「海事分野における女性の活用」を昨年の重点事項に掲げていたにも関わらず、IMO・日・仏・英等から支援のために派遣された専門家の全ては男性であり、IMFや世銀のような他の国際機関と比較しても、IMOの女性活用に対する姿勢は見せかけだけで実質が伴っていない。
      • 原文 September 10, 2020, Forbes(長谷部正道)
    • 【2】ReCAAP ISC: 8月のアジアにおける海賊・武装強盗事件報告書
      • 【2】アジア海賊対策地域協力協定情報共有センター(ReCAAP ISC)が発表した8月の月間海賊・武装強盗事件報告書によれば、8月に同センターに報告された海賊事件は0件、武装強盗事件は6件であった。武装強盗事件はいずれも既遂事件で、3件は錨泊中、1件は着岸中、2件は航行中の船舶が被害にあっている。また、重要度2(賊は武装し、乗組員が脅迫や人質の被害に会う)、重要度3(賊は武装するも、乗組員に被害なし)及び重要度4(賊は武装せず、乗組員の被害もなし)がそれぞれ2件ずつであった。今年1月から8月までに報告された海賊・武装強盗事件は計65件を数え、前年同期の47件から38%以上増加し2016年以降最多となっている。シンガポール海峡での違法乗船事件は8月に2件報告されており、今年に入り計21件に達し昨年同期の14件と比較して増加している。21件のうち17件が東航レーン内で発生している。8月は船員の誘拐事件の発生は報告されていないが、アブサヤフのメンバーがサバ州東方沖を通過する船舶を標的として船員の誘拐事件を計画しているとの情報もあり、身代金目的での船員の誘拐事件は依然として深刻な懸案事項となっている。
      • 原文 September 11, 2020, ReCAAP ISC(若林健一)
    • 【3】IEA: 海運の代替燃料としては短中期的にはバイオ燃料が有力
      • 【3】IEAが「エネルギー技術の今後の見通し:2020年」報告書の中で、海運の脱炭素化について分析しているところその概要は以下のとおり。①海運・航空・物流を含む世界的な交通分野の脱炭素化には、合計で21兆ドル(約2200兆円)の投資が必要。②海運の脱炭素化に関しては、バイオ燃料及び運航効率の改善が今後5年間の短期政策の主流となる。③メタン・プロパンやアンモニアをベースにした代替燃料は、商業的に実用可能になるまで10年近くかかるが、バイオ燃料は重油・VLSO・ディーゼルとブレンドして使用することが可能で、新規造船や機関への投資の必要性がなく、徐々に混合比率を高めていくことが可能なため、短中期的な脱炭素化の手段として最も有力な選択肢である。④バイオ燃料は、2040年には2,500万トン、2050年は5,000万トンが他の燃料とブレンドして使用されるようになり、船舶燃料全体の約1/5を占めるようになる。⑤またバイオ燃料の生産量は、2019年は200万バレル/日だったのに対し、2030年までに500万/日まで拡大し、代替燃料としてまずは道路車両に使用され、続いて海運・航空分野で利用されるようになる。
      • 原文 September 11, Lloyds List(植木エミリ)
    • 【4】世界海運協議会:EU ETSの国際海運に対する域外適用に懸念を表明
      • 【4】定期船海運業界の国際団体である世界海運協議会(WSC)は、国際海運に対するEU排出権取引制度(ETS)の域外適用について懸念を表明する文書(discussion paper)を発表したところその概要は以下のとおり。①EU MRVの対象となるすべての航海にEU ETSが適用され、CO₂排出1トン当たり25ユーロの排出権料を支払うと、コンテナ海運業界全体で年間34.5億ユーロ(約4300億円)の負担増になるため、EU域外国との間で、EUの規制の一方的な域外適用に関し、貿易・裁判・外交上の深刻な軋轢を生む可能性が高い。②EU規則の一方的な域外適用に対抗して、EU域外国が同様の措置を導入すれば、二重に排出権料を徴収される可能性があり、またEU域外国からEUの港湾に到着し、他の船舶に積み替えて、最終的にアフリカ諸国・ロシアや多くの後発開発途上国(LDCs)に向かうような貨物については、2回排出権料が課金されることとなり、LDCsの輸出入に大きな影響を与えることになる。③EU ETSの適用は、IMOにおける全世界的に共通なGHG削減の努力に悪影響を及ぼす。
      • 原文 September 10, 2020, World Shipping Council(長谷部正道)
    • 【5】サウジアラビアの世界最大のGreen Hydrogen生産工場は成功するか?
      • 【5】湾岸諸国では、肥料や特殊化学薬品を製造するため既に多くの水素を消費し、かつ生産しているが、生産しているのは現在世界で生産されている多くの水素と同様に、天然ガスから製造されるいわゆる「灰色の」水素である。しかし中東地域は再生可能エネルギー発電コストの安さや豊富な土地に恵まれており、商業規模で再生可能エネルギーから生産される水素(Green Hydrogen : GH)の世界的な生産・供給拠点となる可能性を持っている。今年7月、サウジアラビアの未来モデル都市・Neomと同国のエネルギー会社のACWA Powerは、米の工業用ガス製造システム会社のAir Productsと、世界最大のGHとGreenアンモニアの製造プラントを90億ドル(約9500億円)投資して建設する共同契約を締結した。1か所で4GW分の風力・太陽光発電施設を建設するのは容易なことではなく、ACWA Powerの事業運営の透明性の確保も課題となるが、もし事業が実際に動き出せば、石油ガス資源に依存してきたサウジアラビアにとって、エネルギー政策の大きな転換点となる。
      • 原文 September 7, 2020, Energy Post. EU(植木エミリ)
    • 【6】日本が「エネルギー憲章に関する条約」に対する欧州改正案を阻止
      • 【6】エネルギー憲章に関する条約(Energy Charter Treaty: ECT)では、エネルギー企業が投資受け入れ国がエネルギー企業の利益を損なう政策変更を行った際には、受入国に対して訴訟を提起できる権利(ISDS)をエネルギー企業に保証しているが、欧州諸国は、受入国が気候変動対策をとることによって、エネルギー企業の利益が減少する場合などを想定して、ISDSの代わりに、国際投資紛争裁判制度を導入する改正を目指しているが、日本政府は昨年10月に現在の条約を改正する必要がないとの立場を明らかにしている。日本はECT加盟国の中で最大のドナーであり、条約近代化交渉の副議長のポストを握り、近代化交渉に大きな影響力を持っているが、2020年中は実質的な交渉に入らずに、近代化交渉に関する各国の立場の表明に留めるべきとの後ろ向きの立場を主張している。欧州議会では、9月8日、139名の議員が、ECTのISDS条項はEU諸国の気候変動政策を脅かす存在であり、化石燃料に対する投資家を保護するためのISDS条項を廃止しない限り、欧州諸国はそろって、ECTから脱退すべきとの声明を発表した。
      • 原文 September 8, 2020, Climate Change News(長谷部正道)
    • 【7】英国公衆衛生庁がロンドンにおける規制強化の可能性に言及
      • 【7】コロナウィルスの新規感染者の増加を踏まえ、英国政府は9月14日から人が集まる場合の人数制限を全国的に強化したが、英国公衆衛生庁(Public Health England:PHE)は、感染の第2波を防ぐためにはさらなる規制が必要となる可能性があり、感染拡大が予想されるロンドンではその全域が対象となり得ると述べ、ロンドン市民に対し感染拡大を防ぐための協力を呼びかけた。PHEは、ロンドンで感染拡大が予想される理由として、学校再開に伴い国内や海外から約50万人の学生がロンドンに集まること、特に感染者が急増しているイングランド北部や中部での検査が優先されるなか検査体制が増加する需要に追いついていないこと、最近複数の介護施設でクラスターが発生していること、市内の約10地域で感染者数の割合が急増していることなどを挙げている。

        ※9/15の英国の感染者数:3,105人(日本270人の12倍、緊急事態解除基準47人の66倍)
        ※9/15の英国の死者数:27人(日本9人の3倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 September 16, 2020, Evening Standard (若林健一)
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