2020/08/04LROニュース(7)

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  • 2020.08.04 UP
    2020/08/04LROニュース(7)
    • 【1】 南極東氷床等の氷河の融解により数世紀以内に海面が13m上昇
      • 【1】これまで、地球上の氷の8割を占めている東南極氷床が最後に後退したのは約300万年前と考えられていたが、米ネブラスカ大学等の研究者が東南極氷床から採集した結晶を分析したところ、氷床の大部分が40万年前にも崩壊していたことがNature誌に発表された論文により明らかになった。驚くべきことに、こうした変化は長期的だが比較的穏やかな間氷期に発生しており、大気中のCO₂濃度は高くても300ppm程度だった。大気中のCO₂濃度は、1915年には既に300ppmを超え、現在は410ppmまで上昇しているが、更なるCO₂排出量の増加によって、今後数百年間で気温や海面は40万年前よりはるかに上昇する恐れがある。北極から遠く、温暖な空気に晒されているグリーンランド氷床や、海中の岩盤に乗っているため暖流と接している西南極氷床が22世紀中に失われると予測されている一方で、南極点を含み、そのほとんどが陸上にあるため温暖な海洋から隔絶されている東南極氷床は安定していると考えられてきたが、この新事実が実証されれば、東南極氷床の融解によって従来の予想より早く海面が上昇する可能性があり、東南極氷床を含めた今後数百年間で融解する可能性のある氷河によって、海面は約13m上昇することが既に予測されている。
      • 原文 July 22, 2020, National Geographic(植木エミリ)
    • 【2】 ECSA: EU復興計画に対するコメントと優先順位を発表
      • 【2】表記プレスリリースの概要は以下のとおり。①EUの経済復興計画に対し、欧州船主協会(ECSA)は、パンデミックによって大きな影響を受けたEUの海運産業の持続性確保に関する短期的な対策と、EUの海運産業の脱炭素化と環境政策に係る中長期的な対策について提言する。②EUの海運業界は、IMOにおいて合意された2030年までと2050年までのCO₂削減目標と、2050年までに欧州が世界で最初の炭素中立大陸となることを目指すEU Green Dealを達成するための有効な手段として、新たな燃料サーチャージを通じた資金調達により、50億ドル(約5300億円)の海事研究開発基金の創設を既に提案している。③CO₂排出量の多い産業からのCO₂の削減ではなく、当該産業からの収入を最大化することを目的にEU排出権取引制度(ETS)を海運分野に適用することには反対する。④パンデミックによる影響調査の結果として、来年以降の収益改善が見込める海運会社は4割程度で、加盟国による支援策が無ければ、来年以降4割以上の船員が失職する。⑤復興計画によって、海運業界の脱炭素化を支援すべきで、業界に不必要・不均衡な経済的な負担を負わせるべきではない。
      • 原文 July 24, 2020, ECSA(植木エミリ)
    • 【3】 今後の水素燃料普及の課題と見通し
      • 【3】(論説)環境に優しいエネルギーを求める声の高まりを受け、水素はゼロ炭素燃料として世界中で注目を集めており、LNGや天然ガス同様水素燃料供給のハブを目指すEUでは、2030年までに5千億ドル(約53兆円)を投資するロードマップが採択された。水素経済が経済的に成り立つには、既存の施設を利用する必要があるが、水素の粒子は天然ガスよりも細かく、爆発性の高い水素ガスを扱うには天然ガス用の施設をそのまま転用することはできない。また気体の水素と天然ガスは混合可能だが、LNGと液体水素は混合することができないため、新たな貯蔵施設やタンカーを建造する必要がある。水素燃料の輸送コストを考えると、初期段階では経済的にみても、実際に水素燃料を使用する現場で水素を製造するon-site productionが優先されると見込まれている。輸送する場合には、天然ガスと同様海上輸送よりもパイプラインを活用する方が経済的で、現在大きな議論となっているNord Stream 2パイプラインも、水素ガスを8割まで混合して使用することが可能とされている。また、現在サウジアラビアで計画されている太陽光発電による安い電力を利用して製造された水素をアンモニアの形で輸送するのも、水素をそのまま輸送することに比べて実現可能性が経済的・技術的に高い。
      • 原文 July 30, 2020, gCaptain(植木エミリ)
    • 【4】 米国の800か所以上の有害廃棄物処分場が海面上昇によって危険な状況に
      • 【4】Union of Concerned Scientists (UCS)が発表した「大規模な沿岸部の洪水と有害廃棄物処分場との間の有害な関係」と題する報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①米国東海岸とメキシコ湾沿岸から25マイル(約40km)以内の地域には、正規の有害廃棄物処理場の他に、有害廃棄物が不法投棄され環境保護庁(EPA)が管理する最も危険なSuperfundと呼ばれる有害廃棄物処理場が併せて約2千か所あるが、将来的に海面上昇が進むと、洪水に襲われて、有害廃棄物が流出し、周辺環境を汚染する可能性が高くなっている。②Superfundの周辺には圧倒的に低所得者や有色人種といった社会的弱者が居住している。③オバマ政権においては、大統領令によって、洪水によるSuperfundのリスクについて研究を進めることが義務付けられていたが、トランプ政権になって当該大統領令は破棄され、リスク調査も実施されていない。④本報告書は、将来大規模な洪水が発生した際に、Superfundから有害廃棄物が流出しないようにする段階的な対策を提言している。
      • 原文 July 28, 2020, Union of Concerned Scientists (長谷部正道)
    • 【5】 中国の2隻目の砕氷船が北極海北航路で長期調査活動
      • 【5】今年7月中旬に中国は砕氷船Snow Dragon-2を北極海北航路に派遣した。米国が北極海への中国の進出に反対の姿勢を見せてきた一方、露は、米国より中国の存在感が高まる方がまだ良いと考え、これまで中国の北極海における活動に対して否定的な態度はとってこなかった。しかし、中国は今回の派遣で北極海航路の大部分を含めた1万2千㎞以上にわたる航海を9月まで予定しており、さすがの露も、今回の派遣もこれまでと同様に科学的調査が目的であるとする中国の主張を額面通りには受け取っていない。露は今回の中国の砕氷船派遣の動きに関して、主に2つの理由から懸念を抱いている。1点目は、今回派遣された砕氷船は2隻目であり、少なくとも中国が長期行動を可能とする砕氷船を2隻以上保有していることを示しており、数では露には及ばないが露の砕氷船は各港湾の砕氷作業にも従事する必要があること等から、これは軽視できない事実である。2点目は、中国は自国を北極海に近い国と称し、中国と欧州を結ぶ氷上のシルクロードを実現すべく北極海でのプレゼンスを高めようとしている点である。露は引き続き中国に対し控えめな姿勢をとると予想されるが、今回の砕氷船派遣の動きは次回の北極評議会での関心事になると予想される。
      • 原文 July 23, 2020, The Jamestown Foundation(若林健一)
    • 【6】 英国:排出権取引制度と炭素排出税に関する今後の見通し
      • 【6】7月14日、英国政府は2020年GHG排出権取引制度(UK ETS)政令案を発表し、21日から新たな炭素排出税に関するパブコメを開始した。英国政府の方針としてBrexit後もEU排出権取引制度(ETS)に引き続き参加する一方で、EU ETSと互換的なUK ETSを設立することを第1目標としているが、Brexit交渉の結果、当該目標の達成が困難な場合は互換性のない英国独自のETSを導入するか新たな炭素排出税を導入する方向で検討が進んでいる。政令では、UK ETSの実施段階を2021-2025年までの排出権割り当て期間と、2026-2030年までの期間に分けている。政令の適用範囲はEU ETSの適用範囲と同じだが、病院と小規模企業については選択的な離脱を認めている。UK ETSの総排出枠は、EU ETSの第IV期において英国に認められた排出量より5%少ない水準に暫定的に設定されるが、英国の気候変動委員会(CCC)は2020年12月に第6次排出権予算(割り当て)を発表するとともに、2050年までに炭素中立を達成するために必要な新たな総排出枠を提示する予定で、政府はこれを受けて、総排出枠の段階的な削減案についてパブコメを行う。
      • 原文 July 31, 2020, Latham & Watkins(長谷部正道)
    • 【7】 英国統計局:イングランドの死者の増加率が欧州で最悪との結果を公表
      • 【7】英国統計局が7月30日に公表したデータによると、イングランドでは今年の5月29日までに死亡した人の数が、過去5年間の平均値と比較して7.5%の増加となり、英国全体では6.9%の増加となった。これは欧州全体で最悪の数値であり、英国のコロナウィルスによる被害が如何に深刻であるかを示している。欧州で次に多いのはスペインの6.7%増で、スコットランドの5.1%増がこれに続く。ピーク時のみを比較するとスペインが英国よりも高い数値となっており、また、都市レベルで見るとスペインのマドリードやイタリアのミラノが英国の各都市に比べて高い数値となっているが、これらの結果は他の国と比較して英国では国内に広く感染が拡大し事態の収束に時間を要していることを示している。

        ※8/2の英国の感染者数:744人(日本1,540人の0.5倍、緊急事態解除基準47人の16倍)
        ※8/2の英国の死者数:8人(日本0人)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 July 30, 2020, BBC(若林健一)
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