2020/08/03LROニュース(7)

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  • 2020.08.03 UP
    2020/08/03LROニュース(7)
    • 【1】 北極海における米・露・中の競争と欧州・大西洋同盟への影響
      • 【1】冷戦終結後の30年間、北極海は各国による成功的な協力関係により、他の地域のように緊張関係を招いてはならないという例外主義的な考え方に基づき平和的な状態が続いてきた。しかし、気候変動により氷の融解が前例のない速さで進行し、未開発の天然資源を有する北極海の広範囲で船舶の航行が可能となったことにより各国が経済活動を活発化させることが予想される。北極海で激しさを増す米・露・中の競争が地域の安定に影響を与えるだけでなく、北大西洋条約機構(NATO)や欧州連合(EU)にとって戦略的に重要な他の地域にも影響を及ぼす可能性がある。欧州・大西洋同盟は北極海における協力関係を維持しつつ北極海から派生する欧州・大西洋地域の防衛に対する脅威に対処する必要があり、状況把握を強化するための共同アプローチの検討や、北極海におけるあらゆる事象や不測の事態により生じるリスクを軽減するための確固たる戦略的ガイドラインの策定が期待される。また、北極海における地政学的な情勢の変化を現実的な見方をもって捉え、必要なインフラ整備、経済開発、防衛能力の強化に取り掛かる必要がある。
      • 原文 July 29, 2020, EU ISS(若林健一)
    • 【2】 北極圏における露とNATO/米の対立構造(露側主張)
      • 【2】北極圏における露と北大西洋条約機構(NATO)との対立は新たな局面に入りつつある。米国務長官はデンマークを訪問するに当たり露を脅威であると指摘し、米国政府は、露が海軍記念日の式典で行う軍事パレードの準備を進めるに際して、露が北極圏において軍事力の強化を図っていると非難した。露は近年北極圏での軍事基地の建設を進めてきたが、これは旧ソ連時代の軍事基地を単に復旧させたに過ぎず、過度な軍備増強とは言い難い。今年6月に米大統領は、露や中に対抗すべく国防総省などに対して北極圏における米国のプレゼンス強化のための計画策定を指示した。これには2029年までに大型砕氷艦を少なくとも3隻建造することが含まれるが、建造には長期間を要することから、米及びNATO加盟国は北極海で定期的な軍事演習を実施している。一つ重要な点は、北極圏において露はあくまで自国の領域内において軍隊を展開させているが、米国やその同盟国は自国の領域からはるか遠く離れた露の領域付近において活動しているという事実であり、露は自国の管轄権が及ぶ範囲を保護すること以外に関心はない。
      • 原文 July 24, 2020, TASS(若林健一)
    • 【3】 「気候変動と気候変動対策」に関する欧州議会議員説明資料
      • 【3】欧州議会調査局による、「気候変動と気候アクション(Climate change and climate action)」と題された議員向け説明資料の概要は以下のとおり。①コロナ危機は、気候変動問題に対処する政策実行の機会と共に、その課題も提示している。②パンデミックに対応するため講じられた政策によって、経済・社会的活動は劇的に低下し、それに伴ってGHG排出量も一時的に減少した。③テレワークやビデオ会議といった危機下で取り入れられた新しい習慣は、今後も継続し通勤や出張に伴うGHGの削減に寄与することが見込まれる一方で、公共交通機関が安全でないと判断されれば、自家用車の利用は増える恐れがある。④経済危機は家計や企業の財政に影響を及ぼし、低炭素技術への投資を縮小または遅延させる可能性がある。⑤経済復興政策は、低炭素技術への投資を促進する機会にもなりうるが、同時に炭素集約的な製品や経済活動への融資を促進させる危険性もある。⑥COP26の1年間の延期は、国際的な気候変動問題への取り組みを鈍化させるが、コロナ危機の影響を受けて、各国がより野心的な長期戦略を策定するための好機でもある。
      • 原文 July 29, 2020, 欧州議会(植木エミリ)
    • 【4】 コロナ感染予防対策によるプラスチックごみの急増とその対策
      • 【4】コロナ感染対策として使い捨てマスクの使用が推奨されているが、国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、マスクの生産額は2019年の8億ドル(約840億円)に対し2020年は世界全体で1660億ドル(約17.4兆円)と200倍以上増加する見込みである。使い捨てマスクや手袋等コロナ関連の医療廃棄物の3/4はごみとして埋め立てられるか海洋に流入することが見込まれ、国連環境計画(UNEP)の試算によれば環境損害を除いても、観光・漁業に約400億ドル(約4.2兆円)の損害が発生すると推定される。Pew Charitable Trustsの報告書によれば、海洋プラスチックごみについて何の対策も取らなければ、海洋に投棄されるプラスチックごみの量は2040年までに3倍になり、年間1100万トンから2900万トンに増加する。UNCTADによれば、プラスチックごみの抑制に貿易政策が果たす役割は大きいが、各国がばらばらに取り組んでいるため十分な効果は発揮されておらず、世界全体で統一された規則を導入する必要がある。またUNCTADは各国政府に対し、毒性がなく生分解性または簡単にリサイクルできる天然繊維・コメのもみ殻・天然ゴムなどの環境に優しいプラスチック代用品の生産・利用の促進を呼びかけているが、バングラデシュの麻やタイの天然ゴムなど、天然素材の代用品の主要な生産国は開発途上国であり、ごみの削減だけでなく開発途上国での経済・雇用の促進といった利点も見込める。
      • 原文 July 30, 2020, 国連(植木エミリ)
    • 【5】 ECJ:洋上風力発電の設置許可に関する国内法令に環境評価を義務付け
      • 【5】ベルギーの洋上風力発電施設建設予定海域の近隣関係者は、当該洋上風力発電施設の許可基準を定める地方政府の条例と通達自体が、指令2001/42に従って、環境評価を行うことが義務付けられている「計画と事業」に該当するので、実際には環境評価を行っていない地方政府の条例と通達に定める基準に基づいた洋上風力発電施設の設置許可は無効であると欧州司法裁判所(ECJ)に申し立てていた。ECJは、加盟国政府が意図的に環境評価を実施することを回避することを抑止するためにも、「計画と事業」の範囲を広く解釈すべきで、設置許可基準を定める条例等には、風車の回転による影・騒音・安全などに関する様々な規定が含まれており、指令2001/42に従い、環境評価が必要となる「計画と事業」に該当するとして、洋上風力発電施設の設置許可自体を無効とした。この判決によって、欧州における洋上浮力発電の迅速な開発が阻害される可能性が高い。
      • 原文 July 30, 2020, Jones Day(長谷部正道)
    • 【6】 持続可能な未来における海洋再生可能エネルギーと深海底鉱物資源の役割
      • 【6】ノルウェー首相とパラオの大統領が中心となって、日本の安倍首相も含む世界の14か国の首脳によって、2018年9月に創設された「持続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベルパネル(Ocean Panel)」が標記Blue Paperを発表したところその概要は以下のとおり。①パリ協定の1.5℃目標を達成するために必要なGHG排出削減量の5.4%を、着床式/浮体式洋上風力・潮力・海流などを利用した海洋再生可能エネルギーの活用によって削減することが可能。②しかし、太陽パネルや洋上風力発電のタービンの製造には様々な希少金属が必要.③銅・コバルト・ニッケル・亜鉛・金・銀・リチウムなどの上記希少金属は、深海底の豊富な金属塊から採集することが可能。④しかし、深海底における鉱物資源の採鉱を実施する前提として、採鉱による海洋環境に与える影響や、その影響を緩和する方策を検討する必要。⑤しかし、超電導発電機などの新たな技術開発によって、再生可能エネルギー関連機器生産に必要な希少金属への依存度を下げることなどにより、持続可能な海洋再生可能エネルギーの開発は可能。
      • 原文 June 24, 2020, Ocean Panel(長谷部正道)
    • 【7】 英国政府:8月1日から予定していた緩和策の一部実施延期を発表
      • 【7】英国政府は、イングランドにおいて5月以降初めて市中感染が増加傾向にあるとして、8月1日から導入する予定であったカジノやボーリング場の再開、一部のスポーツ観戦の許可、結婚式の参加人数の制限緩和などの緩和策の実施を2週間遅らせることを7月31日に発表した。また、映画館、博物館、教会などでのマスク着用も8月8日から義務化される。政府はこれに先立ち、7月30日、新規感染者が急増しているグレーター・マンチェスターなどイングランド北部の複数の地域について、異なる世帯の家を訪問することを禁止する措置を発表していた。

        ※7/30の英国の感染者数:846人(日本1,264人の0.7倍、緊急事態解除基準47人の18倍)
        ※7/30の英国の死者数:38人(日本3人の13倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 July 31, 2020, BBC(若林健一)
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