2020/05/29LROニュース(7)

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  • 2020.05.29 UP
    2020/05/29LROニュース(7)
    • 【1】 荷主の環境に対する懸念と燃料油価格の上昇で喜望峰周りが減少か?
      • 【1】 アジアから北部欧州への航海について、スエズ運河経由ではなく、喜望峰周りを選択すると、航海距離が約3千マイル(約2600海里)、航海所要日数が5-10日間増えるだけではなく、1000トン以上の燃料を余計に消費することになり、IKEAのように自社の物流に関して、高いCO₂削減目標を掲げている荷主から非難が上がり、同社は喜望峰周りの航路を使用する船社を使用しないことを検討している。さらに喜望峰周りを船社が選択する要因となっていた船舶燃料価格については、4月からトン当たり価格が$150(約16200円)から$ 250(約27000円)と約7割も上昇しており、さらにスエズ運河庁がコロナウィルスによる通航船舶減少に伴う運河通航収入の減少を回復するため、5月から様々な通航料金の割引を導入したことから、喜望峰周りを選択する経済的な動機も少なくなっている。
      • 原文 May 27, 2020, The Loadstar(長谷部正道)
    • 【2】 プラスチック業界がパンデミックを悪用して規制緩和を画策
      • 【2】 コロナウィルスが蔓延し始めた頃、米国のプラスチック産業界は、何回も使用できる買い物袋や洗濯できる布製の買い物袋は、コロナウィルスに感染する可能性があると主張して、使い捨てレジ袋の利用を推奨しようとした。しかし最近の研究結果によれば、プラスチックの表面に付着したコロナウィルスは最大3日間感染力を維持し、繊維等に付着した場合と比べてより長い期間危険であることが分かっている。欧州においても、欧州プラスチック加工業協会は使い捨てプラスチック製の医療用品はコロナウィルスとの戦いに必要不可欠であるとして、欧州委員会にSingle-Use Plastic Directiveの移行期間を延長するよう求めたが、欧州委員会は当該指令の対象となるのは海洋プラスチック汚染の原因となる特定の使い捨てプラスチック製品であり、医療用品は除外されているとして申請を却下した。コロナ危機に乗じてEUの環境規制の施行を遅らせたり、効力を弱めようとするのは自己中心的なご都合主義であり、パンデミックから回復するための持続可能な方法は、業界益に立ったいい加減な議論ではなく、現実の科学的根拠に立脚すべきである。
      • 原文 May 25, 2020, Seas at Risk(植木エミリ)
    • 【3】 IEA: World Energy Investment 2020を発表
      • 【3】国際エネルギー機関(IEA)がWorld Energy Investment 2020報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①2020年の経済はU字型の回復が見込まれ、世界のGDPは6%縮小となる見込み。②エネルギー投資における影響としては、価格が暴落している石油業界で特に深刻なエネルギー需要の衰退と収益の減少に伴うコストの削減、およびロックダウンに伴う人・モノの移動制限による投資活動の実質的な中断という2つの方向から生じる。③完全なロックダウンを行った国は平常時に比べエネルギー需要が25%低下し、部分的なロックダウンを行った国でも18%低下していた。④ロックダウンが世界的にピークとなった4月は、世界で40億人が移動制限を受けた結果、石油需要は対前年比で1日当たり2500万バレル減少した。2020年平均で見ると、1日当たり900万バレル需要減となり、石油消費量は2012年水準まで後退する。⑤石炭は石油に次いで大きな影響を受け、少なくとも8%以上需要が減少する可能性があるが、中国での産業や発電における石炭需要が回復すれば他の地域での減少を相殺する可能性がある。⑥天然ガスの需要減少は、第一四半期においては前年比2%と緩やかだったが、電力生産及び産業用途での需要の低下により、年間では更に減少する可能性がある。⑦電力需要は、年間で約5%減少すると予測されるが、再生可能エネルギーによる発電量は需要による影響を受けにくいため、石炭・天然ガス・原子力による発電量は減少し、結果として再生可能エネルギーのシェアは年間を通じて増える見通し。⑧世界のCO₂排出量は約8%減少して、10年前の水準まで低下する。
      • 原文 May, 2020, IEA(植木エミリ)
    • 【4】 デンマークの交通主要企業等が持続可能エネルギーの実用化で協力
      • 【4】 コペンハーゲン空港、マースク、国際物流企業のDSV Panalopina、フェリー会社のDFDS、スカンジナビア航空、電力会社のエルテッドは、早ければ2023年までに、コペンハーゲン市内における陸上、海上、航空輸送用の持続可能な水素や電気燃料(e-fuel)を工業規模で製造するために協力することに合意した。2030年までには、バス・トラック・船舶・航空機に年間25万トンの持続可能燃料を供給することを目標としており、持続可能燃料は世界最大級の1.3GWの能力を持つ電気分解装置で製造し、施設が全面稼働すれば、年間85万トンの炭素排出削減も見込まれている。ボストンコンサルティンググループとCOWIも事業に対するアドバイザーとして参加し、コペンハーゲン市の非炭素化戦略に従い、同市の支援も受ける。参加企業はこの事業が触媒となって、デンマーク国内の他の都市や外国においても持続可能な燃料供給事業が広まることを期待している。
      • 原文 May 26, 2020, マースク(植木エミリ)
    • 【5】 北極圏の永久凍土が予想より早く融解する可能性
      • 【5】 永久凍土が融解すると、地盤の沈下や陥没が発生し、池や湖のある窪地を形成してサーモカルストと呼ばれる地形の変化が起こるが、独のアルフレッド・ウェーゲナー極地研究所とノルウェー・オスロ大学の調査チームがNature Communication誌に発表した論文によると、サーモカルストが永久凍土の融解を大幅に早める可能性があることが分かった。高緯度地帯や高山地域で大気温が上昇すると永久凍土が融解し、永久凍土の中に封じ込められていた大量のGHGが大気中に放出され、地球温暖化を加速させる。永久凍土の融解によって、地中の氷の層も融解するためサーモカルストが起こるが、このサーモカルストもまた、永久凍土の融解を促進する。これまで、永久凍土の増減の予測にサーモカルストは考慮されていなかったが、研究者達がサーモカルストの地形を考慮したコンピューターモデルを開発してシミュレーションしたところ、現在はマイナス10℃の低温を保ち、安定しているシベリア北東部の永久凍土でさえ、今世紀末には融解することが予想された。ノルウェーの泥炭地でも同様の可能性が指摘されており、北極圏の生態系や景観を守るためには、地球温暖化を抑制し永久凍土の融解を防ぐ必要性が示唆されている。
      • 原文 May 26, 2020, Phys.org(植木エミリ)
    • 【6】 COP26の1年間の延期はGreen Recoveryの実現を困難に
      • 【6】 COP26のホスト国である英国は、5月26日国連に対し当初今年11月に予定されていた会議の開催を2021年11月まで延期することを提案した。この提案は国連において28日承認される見込みで、英国政府は参加国へ宛てた書簡の中で、コロナウィルスの不均等な広がりを鑑みれば、この日程が更なる延期となるリスクが最も低く、野心的で包括的なCOPを実現する絶好の機会であると述べた。COP26は、パリ協定の目標を達成するため、加盟国が既存の自国のGHG削減目標(NDCs)の見直しを行うパリ協定合意以降最も重要な会議である。しかし、COP26が一年間遅れることによって、各国や国際金融機関が気候への影響を考慮せずに経済復興計画を推し進める可能性が懸念されている。コスタリカのエネルギー・環境大臣は、COP26が小幅延期になれば、経済復興計画においても見直し後のNDCsの達成を見据えたものになる(Green Recovery)可能性が高くなる一方で、まるまる1年間COPの開催を延期してしまうと、復興計画の中で十分に環境政策が考慮されなくなる恐れがあると指摘している。
      • 原文 May 26, 2020, NY Times(植木エミリ)
    • 【7】 英国政府がロックダウンの一部緩和を発表
      • 【7】 英国政府は5月28日の記者会見でロックダウンの一部緩和を発表した。6月1日から段階的に学校を再開させ、自動車のショールームなど一部業種の営業も再開させる。さらに感染の状況次第では6月15日からさらに多くの業種の営業を再開させるとしている。また、2m以上の距離を保つことを条件に、6月1日から公園や自宅の庭などで、同居者以外の人と6人まで集まることが可能となる。一方で、感染率を示すR値は0.7から0.9でわずかに減少しているが1.0に非常に近く、英国統計局の調査結果では1週間当たりの新規感染者数は54,000に達していることを示しており、引き続き警戒が必要であると述べた。また、抗体検査の結果から、抗体を持っている人の割合が7%以下であり現在も多くの人がウィルスに感染するリスクを抱えているとも明らかにした。
        ※5/27の英国の感染者数:2,013人
        (日本32人の63倍、緊急事態解除基準47人の43倍)
        ※5/27の英国の死者数:412人(日本12人の34倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 May 28, 2020, The Guardian(若林健一)
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