2020/02/18LROニュース(6)

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  • 2020.02.19 UP
    2020/02/18LROニュース(6)
    • 【1】過去20年間のGHGの増加が海流の循環を促進
      • 【1】中国科学院海洋研究所がScience Advance誌に発表した研究によれば、過去20年間に渡って地球全体の平均海流循環速度が加速しており、研究者たちは、この傾向が継続すれば、世界の海洋環境に大きな影響を与えるとの見方を示した。これは海流の循環と海洋表面風速に関する様々なデータを統合し分析した結果に基づくもので、海洋表面風速の上昇は海流の循環を促進させるが、過去20数年間のGHG排出量の増加に伴って、海洋表面風速も著しく加速していることを鑑みると、GHGが海洋循環速度上昇の主たる原因であることが明らかとなった。こうした海流循環速度の上昇は、海洋生態系や地球全体の生化学システムに重大な影響を及ぼすことが予想される。
      • 原文 February 11, 2020, 新華社(植木エミリ)
    • 【2】ICCT: 既存船の機関出力の制限がCO₂排出削減に果たす効果を検証
      • 【2】2月10日、ICCT(International Council of Clean Transportation)が既存船の機関出力の制限(Engine Power Limitation: EPL)がCO₂排出削減に果たす効果を検証した報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①検証作業は、コンテナ船・ばら積み船・石油タンカーの3種類の船舶について、機関出力を10%・20%・30%・40%・50%・60%削減した場合に期待できるCO₂の排出割合を2018年と2030年の時点で計算した。②機関の最大出力を大幅に下回る減速運航が既に実施されているため、EPLとCO₂削減効果は比例しないことが分かった。③この結果、EPLが10%と20%の場合は、実際のCO₂削減効果は無視できるレベルで、30%の場合に、コンテナ船とタンカーで2%、ばら積み船で3%のCO₂削減効果があることが分かった。④したがって、EPLが50%または60%の場合のみ、全ての船種について8%-19%の意味のあるCO₂削減効果が期待できる。⑤EPLが新船に適用されないとすると、2018年の実績と比較して、2030年におけるCO₂削減効果は4割減少する。
      • 原文 February 10, 2020, ICCT(長谷部正道)
    • 【3】EU排出権取引制度に海運を取り込む作業の今後の見通し
      • 【3】欧州委員会の担当者によれば、委員会は2021年半ばに、排出権取引制度(ETS)の適用対象の拡大を提案することを目指して準備作業を進めているが、欧州域内で最大のロッテルダム港を擁するオランダ政府は、ETSを海運に適用拡大するにあたっては、詳細な影響調査を行った上で、IMOの政策との整合性を図らなくてはいけないと主張している。もしこのような影響調査が必要とされるなら、欧州委員会の中の担当部局である気候変動局(DG CLIMA)の作業能力から言って、ETSの適用範囲の拡大はさらに遅れる可能性がある。一方で、欧州議会でEU MRV規則の見直しを取りまとめている独・緑の党のPaulus MEPが作成した報告書案では、海運を速やかにETSに取り込むために、海運に割り当てられるべき排出枠(pollution permit)の算出作業を開始すべきであるとし、さらに、船舶の機関の効率性を向上し、EUの港湾に寄港する約12000隻の大型船舶に対して、2030年までに2018年におけるGHG排出実績比で4割のGHG排出削減を義務付けることも盛り込まれている。
      • 原文 February 13, 2020, Euractiv(長谷部正道)
    • 【4】コロナウィルス:中国の港湾で冷凍コンテナの問題が顕在化
      • 【4】上海港や寧波港をはじめとする中国の北部・中央部の港湾では、コロナウィルスの影響により、多くのトラック運転手がいまだに職場に復帰できず、深刻なトラック不足の結果、多くのコンテナが港から運び出されずターミナルに滞留している。特にリーファーコンテナは機能を維持するための電源の数が不足して深刻な状況にある。この結果、海運会社は中国向けのリーファーコンテナを韓国または台湾に転送して中国国内の状況が好転するのを待っている。賞味期限の短い果物などの生鮮食料品は中国の港湾で廃棄されるものも出始めるとともに、今後4-6週間のうちに、世界的にリーファーコンテナの供給に混乱が生じ、例えば生鮮食料品を輸出する米国の輸出事業者にも影響を与える可能性がある。中国発の輸出貨物減少に伴うコンテナ船の減便は、結果として中国向けコンテナ船の供給の削減となって、米国内の鉄道・トラック貨物の集積ヤード、冷凍倉庫、港湾ターミナルに中国向け輸出貨物が滞留しつつある。
      • 原文 February 13, 2020, The Load Star(長谷部正道)
    • 【5】PPR7: 加政府が北極海における重油燃料使用禁止を支持へ
      • 【5】カナダ交通省の担当者は、IMOの第7回汚染防止・対応小委員会(PPR7)の準備のための国内関係者との会合で、PPR7において加政府は北極海における重油燃料使用禁止を支持する予定と表明した。北極海における重油使用の禁止については、2015年から環境団体とイヌイット北極圏協議会が提唱してきたが、カナダ領北極海で日常生活物資を輸送する海運事業者も含め、海運会社の強い反対を受けてきたが、カナダが賛成に回れば、北極評議会参加国で7番目の賛成国となり、反対するのは露だけになる見込み。重油燃料の使用禁止は北緯60度以北のカナダ・アラスカ海域、コラ半島周辺を除くロシア北極海のほぼ全域に適用される。カナダ政府がPPR7に提出した文書では、重油燃料の使用禁止は環境面で良い結果をもたらすものの、カナダ南部からの物資の供給に依存するカナダ北極圏の人々に、物価の上昇という形で大きな経済的打撃を与えるとしている。
      • 原文 February 14, 2020, AJOT(長谷部正道)
    • 【6】船舶から発生する海中騒音が北極タラの活動に悪影響
      • 【6】船舶から発生する海中騒音によって、ネズミイルカやアカボウクジラ等の海洋哺乳類の生態に悪影響を及ぼすという研究は既に発表されてきたが、この度、ウィンザー大学の研究者が発表した報告によれば、船舶からの海中騒音は、魚類の生態にも悪影響を及ぼすことが分かった。研究者達はカナダのヌナブト準州コーンウォリス島リゾルート湾に生息する77の北極タラの群れに音響タグを装着し、さらに船舶の運航をカメラで把握して、船舶が湾を航行する際に北極タラの群れがどのように反応するか2012年の8月から9月にかけて調査を行った。魚類は餌を探したり、天敵を回避したり、泳いだり相互に連絡するときに音に依存するが、船舶が航行していないときは湾内の水深30mのあたりでじっと固まっているのに、船舶が通行すると最大で147デシベルの海中騒音が発生し、海中の騒音レベルが一気に2倍以上に上昇するので、魚群はびっくりして平常の行動を放棄して、音源から350m先まで最大で30分間避難することが分かった。
      • 原文 February 10, 2020, Science News(長谷部正道)
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