2019/12/12LROニュース(6)

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  • 2019.12.13 UP
    2019/12/12LROニュース(6)
    • 【1】 アラスカの氷河が歴史的なペースで後退
      • 【1】アラスカにおいては2019年が史上最も熱い年となる見込みだが、米国の地質学者が最近発表した研究によれば、アラスカの氷河のいたるところで歴史的なペースで氷河の後退が進んでいる。例えば、ジュノーのレモン・クリーク氷河では、昨年に引き続き、1940年代以来の規模で、氷河の表面の氷が3mも溶けた。表面の氷の融解は氷河の頂上まで広がっている。頂上周辺の高高度地帯の積雪は通常新しい氷河となって、氷河が溶けて低くなるのを防止するが、頂上の氷河まで溶けるということはこうした氷河の自然な再生産が不可能となっていることを意味する。オバマ前大統領が訪問して気候変動の危機を訴えたキーナイ・フィヨルド国立公園の中にあり、観光名所にもなっているBear氷河もわずか11か月の間に約1kmも後退してしまった。アラスカの氷河は世界の氷河の1%以下に過ぎないが、アラスカの氷河の融解は、世界の海面上昇の要因の7%を占めている。
      • 原文 December 6, 2019, Reuters(長谷部正道)
    • 【2】 これまでの排出権取引制度の問題点
      • 【2】排出権取引制度(ETS)は、排出権の売却収入という財政上のインセンティブを途上国に与えて、途上国において再生可能エネルギー事業や森林保全事業などを推進することにより世界全体としてGHGの排出量を削減することを理論的な目標としているが、京都議定書のもとにおけるETSは制度の管理の不適切さと途上国における汚職によりほとんどGHG削減の効果を上げていない。例えば、欧州ETSは2005年に創設されたが、EU国内の事業者に対し多くの無償の排出権を与えたため、排出権の価格が低迷し、事業者は安価にGHGの排出を継続できたため、GHG排出を大幅に削減する効果が出なかった。また京都議定書のもとにできたClean Development Mechanism (CDM)は1380億ドルの資金を集めて、途上国の約8千の事業に投資したが、この事業の内の85%はCDMによる支援が無くても実施されていた事業であるとされ、CDM事業推進によるGHG削減効果に疑問が提示され、欧州ETSはブラジル・中国・インド内の事業に関連する排出権の承認を拒否している。カリフォルニア州はCDM全事業に係る排出権を全て否定している。
      • 原文 December 6, 2019, Inside Climate News(長谷部正道)
    • 【3】 IUCN: 海洋の低炭素化により魚類や海洋生態系が危機に
      • 【3】12月7日、国際自然保護連合(IUCN)が海洋の低炭素化の危険性を警告する報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①気候変動による海水温の上昇と海洋の富栄養化によって、海中の酸素濃度が低下し、2100年までに平均で海中に含まれる酸素の3-4%が失われるが、中・高緯度地域ではもっと極端な影響が出る海域も出る。②世界全体の海域で、低炭素状態と認定されていた海域は、1960年代にはわずかに45海域だったのが、低酸素海域が急激に拡大して、現在では世界で約700の海域が低酸素状態となり、酸素が海中に全く含まれない無酸素海域の広さも60年代と比べると4倍に拡大した。③低酸素海域の拡大を食い止めるためには、GHGの排出削減と農薬に起因する栄養分の海中への流入の減少を図る必要がある。④マグロ・マカジキ・サメなどの運動量の多い大型魚は特に酸素濃度の低下に敏感で、酸素濃度が相対的に高い海面近くに浮上するので、大型魚の過剰漁獲につながっている。
      • 原文 December 7, 2019, IUCN(長谷部正道)
    • 【4】 EUが地球上のCO₂排出源を特定できる観測衛星を2025年に運用開始
      • 【4】現在EUが運用しているコペルニクス衛星では、地球上のCO₂の平均濃度を観測できるだけだが、ヘルシンキで開催された「EU宇宙週間」で、2025年に地球上のCO₂排出源を特定できる能力を持ったSentinel-7衛星の運用を開始すると欧州宇宙庁が発表した。同型の衛星は3基打ち上げられ、地球上の軌道を一日当たり14回周回し、地上250㎞の距離から観測できる。この結果、政府は都市中心部での自動車交通量を削減するための混雑税(congestion charge)やディーゼル燃料の使用禁止や排出権取引制度などが実際に想定とおり実施されているかも確認することが可能となる。さらにSentinel-7に先立って、2020年と2021年にそれぞれ打ち上げられるSentinel-5とSentinel-6にもそれぞれ大気の観測や海面上昇などの新しい環境観測性能が付加されている。大気汚染やCO₂は国境を越えて拡散するので、これまでは隣国の汚染源を特定するのが難しかったが、Sentinel-7によって、汚染者を特定し、罰することが可能となる。
      • 原文 December 5, 2019, Euractiv(長谷部正道)
    • 【5】 海洋保護:セーシェルのユニークな取り組み
      • 【5】セーシェルは2020年末までに、同国の海域の30%を海洋保護区にすると約束する代わりに、同国の対外債務の5%にあたる2100万ドルを慈善団体・投資家に買い取ってもらい、元々の返済利率より安い利率で返済し、差額利子分の800万ドルを海洋生物資源の保護や気候変動対策だけに使うという世界でも類例を見ない契約を2016年に行った。しかし、海洋保護区を設立すれば、同区内の漁業・観光活動をきちんと取り締まらなくてはならず、同国の小規模な沿岸警備隊にとっては容易な任務ではない。そこで沿岸警備隊は空軍の協力を得て、空中から不審船の動向を監視することも検討している。多くの島嶼国がセーシェルの例を研究しているが、ほとんどの収入を海から得ている島嶼国にとって、住民の日々の生活と環境保護とのバランスをとることは容易でなく、政府の取り組みに対して、なぜ漁民だけが犠牲にならなくてはいけないのかと不満を持つ漁業者も存在する。
      • 原文 December 8, 2019, BBC(長谷部正道)
    • 【6】 北極圏の温暖化とその全地球的影響
      • 【6】12月4日、カリフォルニア大学等の研究者がScience Advances誌に発表した北極圏の温暖化とその全地球的影響に関する論文の概要は以下のとおり。①過去10年間、南極の気温は相対的に安定していたにもかかわらず、北極においては、他の地球上の地点と比較してもはるかに急激に0.75℃気温が上昇した。②地球全体として産業革命前に比べて気温が2℃近く上昇する中で、北極は年平均で4℃、冬季は7℃も気温が上昇する可能性がある。(南極はそれぞれ2℃と3℃)③この結果、氷河と海氷の量の減少、野生動物や先住民の生活への悪影響、メタンガス放出の増加、低緯度地域における異常気象が頻発することなどが予想される。④南極と北極における氷河の減少によって、いくつかの条件が重なれば、世界の海面が最大で3m上昇することも考えられる。⑤気候変動緩和対策により、温暖化の速度を落とすことも可能だが、何もしなければ、今後20-40年間に北半球の高緯度地域の温暖化はさらに加速する。
      • 原文 December 4, Science Advances(長谷部正道)
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