2019/03/08LROニュース(6)

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  • 2019.03.11 UP
    2019/03/08LROニュース(6)
    • 【1】UNEA: スイスが気候変動対策としての地球工学上の新技術の国際管理を提唱
      • 【1】太陽光を人工的に反射させたり、大気中から炭素を取り出すような地球工学上の新技術は、地球温暖化防止対策の最終手段として以前から議論されてきたが、地球工学的な技術開発が進むにしたがって、新技術の副作用として発生しうるリスクを十分に検討しないで未検証の新技術が実験され、またそうした地球工学的な新技術がGHGを排出し続けるための免罪符として使われるのではないかという懸念が高まっている。来週からケニアで開催される国連環境総会に、スイス政府は実用化の可能性がある地球工学上の技術を2020年8月までに評価し、それぞれの技術を管理する枠組みを検討することを求める決議案を他の共同提案国とともに提出し、将来的に地球工学技術を規制する国際的な制度の創設を目指している。太陽光を制御するための実験はすでに実施されており、地球工学的な技術開発が科学的な夢物語として片づけることはもはやできないとスイス連邦環境省の国際部門の責任者はコメントしている。
      • 原文 Feb. 26, 2019, Climate Change News(長谷部正道)
    • 【2】Brexit: 英政府がユーロトンネル社に3300万ポンドを支払うことで和解
      • 【2】英国が合意なきEU離脱をすることとなった場合に、大幅な混乱が予想されるドーバー海峡経由の主要物流ルートのバイパスを確保するために、英国政府は追加的にフェリーを用船する総額1億ポンドを超える契約を随意契約で3社と締結したが、2015年まで英仏海峡でフェリーを運航していた実績のあるユーロトンネル社は、今回の用船契約は原則に従い競争入札を行う時間が十分あったこと、仮に随意契約を行う緊急性があったとしても、英仏海峡で輸送実績を持つ同社に打診がなかったのは不公正で調達手続きに瑕疵があるとして英国政府を訴えていた。英国政府は同社と法廷で争っても、随意契約を行う緊急性等について勝算が少ないことから、これ以上、EU離脱対策の失敗事例として非難を浴び続けることを回避するために、同社に3300万ポンドを支払うことで和解した。同社は政府が和解に応じたことは、海峡トンネルがEU離脱後も優先的な物流ルートであることを英政府が認めたことを意味し、和解金によって産業界と国民にとって不可欠なサプライチェーンを維持するために必要なインフラや保安措置等の改善が可能となるとコメントしている。
      • 原文 Mar. 1, 2019, BBC(澤井由紀)
    • 【3】ノルウェー首相・外相が露の主催する国際北極海会議に出席
      • 【3】露は2010年にアルハンゲリスクで第1回国際北極海会議(International Arctic Conference: IAC)を開催して以来、毎年ロシアでIACを開催していたが、2019年の会議には、各国の元首・政治家・研究者・業界の代表などが多く参加するので、開催地をアルハンゲリスクからサンクト・ペテルブルグに変更し、プーチン大統領も全日程参加することとなっている。ノルウェーの首相・外相も招待を受けていたが、ロシアとの協力は地域の安定に重要だとしたうえで、ノルウェー外相は首相とともに会議に参加することを表明した。今年の会議のテーマは「北極海:可能性のある海洋」というテーマの下、持続可能な経済的・社会的発展について議論が行われる予定。
      • 原文 Feb. 28, 2019. High North News(長谷部正道)
    • 【4】USCG唯一の大型砕氷船が南氷洋で船内火災事故
      • 【4】USCGは、唯一稼働状態にある大型砕氷船Polar Starが南氷洋で活動中に発生した火災事故の映像を公開した。火災は2月10日夕刻に焼却炉室で発生し、2時間に及ぶ乗員の消火活動により鎮火した。この火災により焼却炉室内を焼損したほか、消火水により周辺の電気システムと断熱材に損害が生じている。この火災による負傷者の報告はなく、火災原因は調査中である。Polar Starの船齢は耐用年数の30年を超えて43年に達しており、今次の航海でPolar Starに発生したトラブルはこの火災だけではない。南氷洋へ向かう途上には電気配線から発煙し配電盤内の配線や造水器の蒸発器を損傷しているほか、砕氷航海中にプロペラ軸から漏水が発生し潜水士による修理のため砕氷を中断したり、砕氷航海中に電源喪失を起こし復旧に9時間を要するなどのトラブルに見舞われている。
      • 原文 Feb. 28, 2019, Marine Log(武智敬司)
    • 【5】クラゲの粘液をマイクロプラスチックの回収に有効利用する可能性
      • 【5】クラゲはしぶとい生き物で約5億年前から地球上に存在する最も古い生物の一つで、繁殖能力が強く、過剰漁獲、海洋の酸性化・温暖化によって他の海洋生物が減少した分を埋めて増殖していくが、クラゲが増えると海水浴場が閉鎖されたり、原子力発電所の取水口を詰まらせたり、漁業に悪影響を及ぼしたりと有害生物とみなされることが多い。このためEUが4年間で680万ドルの予算をかけてGoJellyという事業を立ち上げて、人間の食物として、魚を養殖する際の魚の餌として、肥料として、化粧品の添加物としてクラゲを有効活用することが検討されている。中でも、仏の研究者達がクラゲの粘液によって、水中に含まれる金のナノ粒子を抽出することに成功し、この技術が下水処理場の処理後の排水に含まれるマイクロプラスチックを除去するのに利用できないかという研究が2015年から開始されたが、実用化のためにはさらなる研究投資が必要で、更なる投資をするためには下水処理後の排水に含まれるマイクロプラスチックの規制基準をまず制定する必要がある。
      • 原文 Feb. 28, 2019, Hakai Magazine(長谷部正道)
    • 【6】北極海の海氷の減少が北極温暖化増幅をもたらしている可能性
      • 【6】米国海洋大気庁(NOAA)の最新の2018年Arctic Report Cardによれば、北極海においては地球の他の部分の気温上昇の2倍のペースで温暖化が進んでいる一方で、1981年から2010年までの30年間に、北極海の海氷面積が10年ごとに12.8%減少していることが確認されている。人類が排出するGHGの増加によって世界全体の気候変動が発生していることに異論はないが、北極において2倍のペースで温暖化が進んでいる現象は「北極温暖化増幅(Arctic Amplification: AA)」と呼ばれるが、AAが発生する仕組みについては解明されていない。このほどNY州立大学オールバニ校の研究者が、過去の北極海の気温と海氷面積に関する情報をもとに、北極海の将来的な気象予測を行ったところ、AAは北極海の海氷が完全に消滅する22世紀または23世紀まで継続することが分かった。10月から4月の間の北極海の海水温が大気温度と比べて高くなる期間中に海氷が大幅に減少した海域でAAが発生し、当該期間中に海氷が消失しない海域においてはAAが発生していないことが判明したため、海氷の減少・消滅がAAの発生に深く寄与していることが判明した。
      • 原文 Mar. 1, 2019, Phys. Org(長谷部正道)
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