2018/10/10 LROニュース(6)

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  • 2018.10.11 UP
    2018/10/10 LROニュース(6)
    • 【1】 ReCAAP週間レポート(9月4日-10日)
      • 9月4日から10日の間にReCAAP ISCに報告された海賊及び武装強盗事件は、武装強盗(未遂)事件1件であった。8月27日午後8時54分頃、インドネシアのMuara Berau錨地に錨泊し荷役中のばら積み船に対し錨鎖を伝って侵入しようとする2名の賊を乗員が発見した。ばら積み船は直ちに警報を作動させ、乗員を前部甲板に向かわせたところ、賊は侵入をあきらめボートで逃走した。被害金品はなく、ばら積み船乗員に負傷者等はない。
      • 原文 Sep. 10, 2018, ReCAAP ISC(武智敬司)
    • 【2】 東南アジアの海洋プラスチックごみ問題に対処するための事業が始動
      • 9月10日、スウェーデン政府、国連環境計画(UNEP)、東アジア海洋調整機関(COBSEA)は、深刻な東南アジアにおけるごみ管理体制の改善を通じて海洋に流入するプラスチックの量を削減するための4か年計画を発表した。東南アジアでは安価なプラスチック容器包装商品の普及やストリートフードの持ち帰り文化によって大量の使い捨てプラスチックが消費されている一方、廃棄物処理能力は限られ、東南アジアのほとんどの国で適正に処理されないプラスチックごみの割合は75%以上に上る。UNEPによれば、世界の海洋プラスチックごみの6割はアジアの6か国から海洋に排出されており、本事業の推進により、対象となる東南アジア諸国のみならず、世界全体の海洋プラスチックごみの削減に大きな効果が期待できるとしている。そのため、本プロジェクトは、スウェーデン国際開発協力庁(SIDA)の資金援助の下、UNEPとCOBSEAが研究機関や民間企業、政府機関などとも連携しながら、最も有害でリサイクルが難しいプラスチックの使用削減やPETなど高価値のプラスチックの回収及びリサイクルの促進、国民の意識啓発を行っていく。
      • 原文 Sep. 10, 2018, UNEP(野口美由紀)
    • 【3】 キール宣言:海洋の低酸素化について警告
      • 9月3日から7日にかけて独キールで開催された海洋の低酸素化に関する国際会議で、「キール宣言」が採択されたところ、その概要は以下のとおり。①海洋低酸素化は、温暖化による海水温の上昇で、溶存酸素量が減少することや海洋循環が弱まり酸素供給量が減少することでもたらされる他、汚染物質である有機物の分解に多量の酸素が消費されることでも引き起こされる。②この50年で低酸素水域は4倍に拡大し、中には酸素の割合が40%減少した海域もある。今後、人口増加と経済成長により低酸素水域はさらに拡大すると予想されている。③このまま低酸素化が進行すれば、海洋生物や海洋生態系、沿岸で暮らす地域コミュニティに深刻な影響を及ぼす上、低酸素状況下ではより多くのGHGが海洋から発生するため、温暖化の加速にもつながる。④今後は、正確な現状把握、溶存酸素量の変化予測、原因と結果の理解向上のために観測の強化が求められる他、科学者や社会活動家らは協働して低酸素化を防ぐための戦略や生態学的影響についてまとめる必要がある。これは海洋環境改善のためにUNESCOが取り組む「国連持続可能な開発のための海洋科学の10年(UN Decade of Ocean Science for Sustainable Development)」にも貢献するものである。
      • 原文 Sep. 7, 2018, Geomar(Julie Harper)
    • 【4】 中国初の国産砕氷船が完成
      • 9月10日、上海の江南造船所で、中国で初めての国産砕氷船の完成引き渡し式が行われた。新砕氷船は、フィンランドの造船所のAker Arctic社の協力を得て中国海事設計(China Maritime Design: CMD)と上海研究院が最終設計を行い、2016年末に起工式が行われ、中国船舶工業集団が製造した114の個別部位を組み立てて2年間で完成した。中国極地研究中心(Polar Research Institute of China: PRIC)が管理運用を行う。この新砕氷船により、中国は既存の1隻と合わせて2隻の砕氷船を持つことになり、米国沿岸警備隊(USCG)と肩を並べた。USCGの船齢42年の旧式砕氷船は2023年までに退役の予定だが、米議会が新たに建造することを要求している砕氷船の建造はまだ最終決定されていない。
      • 原文 Sep. 11, 2018, High North News(長谷部正道)
    • 【5】 アジアの砂漠の砂塵が北極海に積もって温暖化を加速
      • ゴビ砂漠やタクラマカン砂漠の砂嵐で巻き上げられた砂の1/4や北アフリカのサハラ砂漠からの砂塵が北緯60度以上の北極圏に毎年650万㎥堆積しているという研究結果があるが、今後とも北極圏に堆積する砂塵は継続して増える見込みで、氷の表面に付着した砂塵は氷による太陽光の反射率を落とし、そのまま太陽熱を吸収するので、北極圏の温暖化を促進している。カナダ王立軍事大学の研究者がカナダノースウェスト準州に位置するアムンゼン湾とグレートベア湖の2007年から2017年にかけて撮影された衛星画像を調査したところ、氷の表面を砂塵が覆っているのが確認された。
      • 原文 Sep. 12, 2018, CBC News(野口美由紀)
    • 【6】 太平洋ゴミベルトにおけるプラスチックごみ回収事業に対する問題提起
      • (論説)蘭のNPO「Ocean Cleanup」が主導する太平洋ゴミベルトのプラスチックごみ回収事業に対する問題点をScience誌の環境問題担当の編集者が指摘しているところその概要は以下のとおり。①一般論として、海岸や沿岸近くで海洋浮遊ごみの回収を行った方が効果的であり、広範な海上でごみを回収するのは効率が悪い。②蘭の研究者によれば、北海において海洋に流出する産業プラスチックごみの量を削減した結果、海鳥に誤飲されたプラスチックごみの量が75%減少したという事例調査結果もあり、海洋プラスチックごみを削減するためには、海洋に流入するプラスチックごみの量を削減することが根本的な対策である。③以上のとおり効率性に疑問があるハイテク技術を用いた海上におけるプラスチックごみ回収事業が過度に期待されると、プラスチックの使用を控えごみを減らすという基本的な取組姿勢が軽視される懸念がある。
      • 原文 Sep. 11, 2018, Science(野口美由紀)
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